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« 画像診断が意味するもの | トップページ | ①腰椎椎間板ヘルニア-画像診断の矛盾- »

2011/10/24

腰痛の85%は原因不明

《トップページ》
1994年、
アメリカ厚生省は「成人の急性腰痛治療ガイドライン」を発表しました。そしてその2年後、イギリス医師会は「クリニカル・エビデンス」という本を出版しました。いずれもEBMを実践するための画期的なプロジェクトです。世界中のRCT論文を調査し、その結果をまとめ、現時点におけるエビデンス(証拠)を収載しています。

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この両者において、「腰痛の
画像診断に対する見解」は概ね一致しており、その骨子はおよそ従来の常識を覆すものとなっています。これからお話しする内容は、この2つに拠るところが大であることを先に述べておきたいと思います。

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まず「腰痛」の定義についてですが、前出の「クリニカル・エビデンス」によれば、
  『腰痛とは、肋骨の下縁から臀部にかけて局在する疼痛、筋緊張あるいは硬直であり、下肢の痛みを伴う場合と伴わない場合がある』
 とされており、先進諸国の国民の
7割以上が、生涯のいずれかの時点で腰痛を経験すると述べています

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そして腰痛の病因に関しては

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 『患者さんの症状とレントゲン所見はあまり相関せず、85%の人が原因を特定できない
 

と論旨しています。

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レントゲンで原因を見つけることができない腰痛が、どうして8割以上に及ぶのか?それは「背骨の形態変化を指摘する」という説明には、何ら科学的根拠がないことが分かったからです。従来まで原因と考えられていた骨の変化-構造的な欠陥-は、実際には痛みを引き起こすとは限らないことが、世界中から寄せられた実験報告から判明したということです。

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それでは、いったいどのような実験が行われたのでしょう?当コラムの「EBM(根拠に基づいた医療) 」で紹介したとおり、画像診断に対する横断的研究の成果といえます。具体的には、腰痛のある人々と腰痛のない人々のレントゲン写真を比較するという手法によって明らかにされました。

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以下に腰痛とレントゲン写真の関係について、いくつかの実験結果を紹介してまいります

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背骨の腰の部分は5つの骨からできています。これを腰椎といいます。一般に腰椎は前方にゆるやかなカーブを描いています(生理的前彎)。このカーブの消失(腰椎の直立)やカーブが強すぎるもの(腰椎の過前彎)も「痛みの原因」とされています。前回と前々回の稿でも指摘したとおり、整形外科は『形の変化=痛みの変化』と考えているからです。

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ところが、痛みのない200名、急性腰痛の200名、半年以上続く慢性腰痛の200名の3つのグループにおいて、それぞれの腰椎前彎の角度をレントゲンで調べた結果、この3つのグループ間で違いはありませんでした。これによって背骨のカーブと痛みのあいだには何ら相関性のないことが確かめられたのです。

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次に腰椎すべり症の場合はどうでしょうか。これは腰の骨の並びが前後にずれてしまっているものです。腰痛のある308名と無症状の376名を調べた実験では、両グループともにすべり症が約3%見つかっています。つまり腰痛があってもなくても「すべり症の変化」は同頻度に見つかるのです(単一の実験報告ではなく、複数の論文において同様の結論が出されています)。

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腰椎分離症の場合はどうでしょう。実は日本人の約6%に分離があることが分かっており、自覚症状のない人も大勢います。これもすべり症と同様の実験において、同じ結果が得られており、腰痛との因果関係は証明されておりません。

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分離とすべりの両方が合併している分離すべり症ではどうでしょうか。1996年にMuschikという研究者が次のような論文を発表しています。プロのバレエダンサーをレントゲンで調べた結果、32%に分離症が見つかり、そのうちの8割がすべり症を合併していました。そこで、分離すべり症のあるダンサーらと分離すべり症のないダンサーらの腰痛発生率を比較してみたところ、ほとんど差がなかったと報告しています。つまり「分離」や「すべり」があろうとなかろうと、腰痛の出現率に差はないのです。

さらに、ドイツで行われた青少年のスポーツに関する実験では、分離症やすべり症のあるスポーツ選手に対して、5年間集中的なトレーニングをさせたところ、40%の選手にすべりの増加が認められましたが、腰痛を発生させた者は皆無でした。

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「分離」や「すべり」が見つかると、医師から「激しいスポーツは一生できない」と言われるケースがありますが、そうした説明には何の根拠もないわけです。

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また、加齢に伴う背骨の老化や変形(骨が潰れている、骨が変形している、背骨が歪んでいる、骨棘が神経を触っている等と説明されるもの)を「脊柱の退行性変化」といいますが、これらにおいても、腰痛群と無症状群のレントゲンを比較した結果、両群ともに同頻度に認められるという調査報告が多数寄せられており、「脊柱の退行性変化は老化の単なるサインにすぎず、腰痛の原因とは考えられない」というのが研究者らの共通した見解です。

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さらに前ページで指摘した骨の形態異常-潜在性二分脊椎、腰仙移行椎、軽度の側弯など-においても、複数の実験において腰痛群と正常群に同頻度に見つかることが分かっています。

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このように世界中の実験報告を分析し、EBMの手法に則って検証した結果、これまで腰痛の原因として考えられてきた「背骨の形態異常」の多くが腰痛とは無関係であることが分かったのです。そして、これらのデータに統計学的な処理を加えていった結果、結局腰痛の85%は原因不明という現実に辿りついたわけです。

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こうした事実は日本においても、平成17年12月の読売新聞「医療ルネサンス」の記事で紹介されています。興味のある方は、同新聞社が発行している『医療ルネサンス・4000回「読売新聞の医療情報」』というCD‐ROMで閲覧することができます。

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次回i以降は椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症における「画像診断の矛盾」について、解説したいと思います。

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