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« 整形外科の歴史と慢性痛 | トップページ | 腰痛の85%は原因不明 »

2011/10/23

画像診断が意味するもの

《トップページ》
通常、腰痛の患者さんが整形外科を受診すれば、レントゲンによって診断を下され、その結果に沿った治療が行われます。この際の画像写真
による診断を「画像診断」といいます。

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したがって画像に写っている骨の変化が診断名すなわち病名となります。骨の老化と変形が写っていれば「変形性脊椎症」、背骨の分離やすべりが写っていれば「腰椎分離症」あるいは「腰椎すべり症」、骨と骨の隙間にある椎間板が潰れていれば「腰椎椎間板症」といった具合です。

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それでは骨の変化がなかった場合、どんな診断になるのでしょうか。それは「筋筋膜性腰痛症」あるいはただ単に「腰痛症」という病名がつきます。これは原因がよく分からない腰痛という意味です。

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症状の程度から判断して、さらに詳しい検査が必要な場合はCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(核磁気共鳴断層装置)といったハイテク画像検査を行います。これらの検査でヘルニアが見つかれば「腰椎椎間板ヘルニア」、背骨の狭窄が見つかれば「脊柱管狭窄症」といった診断が確定します。

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一般の整形外科においては、このように必ず画像診断を行うわけですが、これ以外に腰痛を診断する方法はあるのでしょうか。つまり画像検査以外に腰痛の原因を探る方法はあるのか?という質問です。

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整形外科の視点で考えるなら、その答えはNOです。視診や触診などによって身体所見も当然調べますが、これらはあくまでも補助的な役割とみなされており、画像検査なしでの診断というのは事実上あり得ません。なかには例外もあるでしょうが、ほとんどのケースでレントゲンによる診断を行っています。

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整形外科は前回のコラムで申し上げた通り『形態の異常を修復するプロ集団』ですので、“変化”を見つけて、それを診断のよりどころにしようとするのは当たり前の話です。それこそが整形外科という科の本質なのですから。

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したがって
形態学を無視した概念」による診断というのはあり得ないわけです。以上の現実を踏まえたうえで、腰痛は次の2つに分けることができます。

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               《画像検査によって
原因を特定できるもの

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               《画像検査によって原因を特定できないもの

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医療機関によってその比率は多少変わりますが、一般的な数字として前者が15%、後者が85です。つまり腰痛の患者さんが街角の整形外科医院を訪れた場合、その8割以上は原因不明という結果が待っているのですこの数字の根拠については次章で詳しく解説してあります)。

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ということは、前述の病名のなかで「骨の変化がなく、原因が分からない腰痛」すなわち「腰痛症」が8割を占めるのかと、お思いになるでしょう。ところが、そうではありません。それ以外の骨の変化を診断名にしている腰痛も、実は痛みの原因がどこにあるのか分かっていないのです。たとえ腰椎分離症や変形性脊椎症などといった診断が下されたとしても、
痛みの本当の原因は分からない」というのが科学的根拠に基づいた『医学上の正式な見解』なのです。

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画像診断による病名が痛みの原因を表しているとは限らない。診断そのものに不確定の要素がかくれている。これは腰痛治療において最も根源的かつ重大な問題と言えます。

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このような話をすると、理解に苦しむという方が多いと思います。
現実に腰痛を訴えて病院に行けば、ほとんどの場合レントゲン検査を受け、画像診断にもとづく病名を聞かされるはずです。骨に変化があれば、それを指摘され、なければ姿勢が悪い、筋肉が弱っているなどと言われるでしょう。

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しかし、そうした説明に
科学的な根拠はないのです。当コラム(腰痛治療の現状)でも申し上げたとおり、現段階で腰痛のメカニズムに対する世界的な統一理論というのは存在しません。脊椎の世界的権威といわれるNachemson氏も、
              
 『腰痛の原因にはいろいろな説があるが、科学的に証明されたものはない』
と断言しています。

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近代整形外科は 
『腰痛とは骨格の損傷ないし形態異常である』

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という大前提のもと、治療にあたってきました。つまり「背骨のどこかに傷があるから、形態異常があるから痛むのだ」と考えてきたわけです。この概念は1世紀ものあいだ、ゆらぐことがありませんでした。なぜこうした考え方から逃れることができなかったのか。その答えは前章整形外科の歴史と慢性痛 )で詳しくお話しさせていただいたとおりです。

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ただし
、検査技術の発達がそのような考え方を強烈に後押ししてしまったという、なんとも皮肉な背景があるのも事実です。1895年のX線の発見以来、レントゲンによる背骨の観察がすすむなかで、けがの有無にかかわらず、さまざまな損傷や形態異常が見つかったのです。

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その結果、加齢にともなう生理的な骨の変化-骨の老化と変形-までもが異常な所見としてとらえられ、背骨にみられる小さな個性すべてが異常な所見として指摘されるようになりました。その例として「潜在性二分脊椎」「腰仙移行椎」「シュモール結節」「椎体偶角離断」「前彎消失」「軽度の側弯」などがあげられます。

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さらにCTやMRIといったハイテク画像検査の登場によって、背骨の欠陥探しにますます拍車がかかるなか、専門家たちの眼は「
椎間板」に釘付けの状態となりました。骨と骨の隙間にある椎間板はクッションの役割があること、加齢にともなう変性を生じやすいこと(要するに潰れるということ)、ヘルニアの原因になるなどの理由もあり、「椎間板原因説」が世界を覆いつくしたのです。

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こうして研究者たちの多くが、背骨の欠陥探しに傾倒していく一方で、
骨に異常が見当たらない腰痛は「なんだか分からない腰痛」として、あまり熱心に研究されませんでした。しかし、プライマリケア(初期医療)の現場ではこうした腰痛が存外多かったため、姿勢や筋肉の問題(筋肉疲労・筋力低下・姿勢異常)を指摘する医師らによって、種々の体操療法、筋肉トレーニング、ウォーキング、水泳などが指導されることになったのです。

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このように現代医学では最初に「
背骨の構造的欠陥」を探します。それが見つかった場合、修復可能なものには手術を選択し、修復不能あるいは欠陥が小さなものには対症療法を施し、骨の異常が見つからないものに対しては、姿勢や筋肉に焦点を絞った治療をしてきました。

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ところが1990年代、医療界を一変させる出来事がおこります。
EBMの登場です(EBMに関してはこちらのページで詳しく紹介しています)。

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EBMによって、従来の画像診断には多くの矛盾があることが分かりました。

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画像検査で見出される「形態異常」の多くが、実は正常な健康人にも多数見られることが分かったのです。

「腰痛はそれまで考えられてきたようなシンプルな問題ではない。形態異常を探して修復するという考え方は通用しない」すなわち

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 形の変化≠痛みの変化

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という事実が科学的に証明されてしまったのです。

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内科、外科、産婦人科、小児科、耳鼻科などたくさんある医科の中でも、整形外科ほどEBMが脅威に映った科は他にないと思います。「風邪の抗生物質の使われ方」どころの話ではありません。各論が問題にされているのではなく、画像診断という考え方そのもの、すなわち総論が問われているからです。

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次回はEBMによって明らかになった「画像診断の真実」について、具体例を挙げて説明してまいりたいと思います。

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