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2011/12/16

⑦神経の変性≠痛み(その4)

《トップページ》
本題に入る前に二点だけ確認させていただきます。

このシリーズを最初からお読みになっている方には不要な説明ですが、単に“神経”と表記した場合、ここでは末梢神経を指します。“神経の変性”というフレーズに関して、たとえば神経変性疾患というと、医学的にはパーキンソンなどの中枢系の疾患を指す場合がありますので、その違いにご留意ください。

もう一点は“変性”と“炎症”の違いについてです。

私がこれまで述べてきた神経の変性とは、物理的あるいは化学的な要因から軸策輸送、活動電位、シナプス伝達、血管の微小循環等といった神経機能の性質が変わることを意味します。その最たるものが脱髄ニューロンを包む絶縁体の融解)です。神経に炎症が発生すると、その結果として変性が生じますが、炎症がないまま変性するケースもあります。

ですから厳密には変性≠炎症と言えますが、「変性にせよ炎症にせよ、そのどちらにおいても異所性発火を引きおこす」という現代医学の主張に異を唱えるという私論の観点から、ここでは変性=炎症という狭義の言語表記をさせていただいております。

さて、前回はからだの中の炎症を見張る“サイレント受容器”にスポットを当て、その機能を切り口に異所性発火の問題を考えてみました。

今回は信号の意味について受け取る側の視点で考えてみたいと思います。

侵害受容ニューロンの伝達速度(秒速30m)が速い理由は、損傷の発生を脳に瞬時に知らせることによって回避行動を促し、組織を守ることにあります。手を切った瞬間に痛みを感じなければ意味がないわけです。その他の感覚ニューロンも含め、総じて感覚神経というのは脳が瞬時に認識しなければならない情報を伝えるホットラインすなわち緊急回線だと言えます。

炎症下の組織に加えられる機械的な刺激も、“損傷”に準じる危険情報であるため、サイレント受容器は緊急回線を使用します。他方、単に炎症の存在を知らせる連絡に関してはのんびりとした液性伝達を採用しているのです(前ページにおいて解説済み)。

侵害受容ニューロンによって届けられる信号は組織の損傷を知らせるサインですので、その痛みはシャープな性質をもっています。そのため「切った瞬間に手を離す」という瞬時の回避行動に直結するわけです。

それに対し炎症の存在を知らせるサイン(液性伝達による神経ホルモン)は、受け取る側にとって本来マイルドな信号です。いわゆる電激痛や鋭利痛のような衝撃的な痛みとは違い、軽い鈍痛か違和感に近いものです。このとき脳が正常な状態であれば、当然その違いを認識するわけですが、痛み中枢の活性化-レセプターの増殖や側座核の機能低下-がおきると、マイルドな信号に対しても激痛を覚えるようになります(これについてはRSDの章で解説します)。

サイレント受容器が炎症の存在を送信する際わざわざ液性伝達を採用しているのは、伝達方式を変えることで情報の質の違いを脳に認識させるためです。

情報レベルはその緊急性によって以下のように分けることができます。

     レベル1…組織の損傷

     レベル2…炎症下の組織に加えられる機械的な刺激

     レベル3…炎症の存在

レベル1瞬時の回避行動を、レベル2即時的な回避行動を、それぞれ脳に促すため緊急回線による伝達が行われます。

前ページの繰り返しになりますが、レベル2の分かりやすい例が胃の内壁に炎症があるケースです。食物による機械的な刺激が加わると、サイレント受容器が反応します。食べることで痛みを感じるわけですので、当然その直後に食べるのを止めるという回避行動につながります(動物界では人間だけが特殊な回避行動をとる)。

足首を捻挫したあとに炎症が発生すれば、動き(機械的な刺激)によって痛みを感じますので、足首を曲げないようにしようとする回避行動が生まれます。胃と足首、いずれのケースにおいても即時的な対応が組織防衛につながるわけです。

その一方でレベル3(炎症の存在)に対しては緊急、即時的な回避行動のとりようがないわけで、緊急回線を使う必然性がまったくありません。胃の炎症に対して何か具体的な回避行動をとることで、その場で炎症が瞬時に消えるということはあり得ないことです。そのためサイレント受容器によって“のんびりとした液性伝達によるマイルドな信号”が届くことで中長期的な対策が求められることになります。つまり考える時間が与えられるのです。体調の異変を察知することで、翌日の行動内容を変える-デパートに行くのを止める、旅行をキャンセルするなど-といった回避行動につながわるわけです。

このように情報内容の緊急性によって信号の伝達スピードや伝達様式が異なる仕組みは、脳にとってたいへんありがたいシステムです。膨大かつ多彩な情報を24時間受信し続ける脳にとって、「緊急の対応が迫られるもの」と「そうでないもの」が区別されて届く体制は、情報処理の効率化という点において非常に優れたシステムだと言えます。

これは私たちの現実社会とまったく同じです。多忙を極めるビジネスの現場では即答が欲しい場面では電話を使い、緊急性のない用件にはメールを使うというのが常識です。もしすべての案件を通話ですまそうとしたら、複雑化したグローバル社会のビジネスはその効率性を奪われて、大半の企業は立ちゆかなくなるでしょう。

人間の脳も800億からなる神経細胞による複雑なネットワークを形成しています。情報処理の効率化こそが脳機能そのものだと言っても過言ではないくらいです。

したがって正規の手続きを踏まずに届けられた情報に対しては、脳は恐ろしいほどの混乱を示します。神経を直接ぶつけたときの信号(異所性発火)を受け取った際の反応がその最たる例で、脳は尋常でない感覚を生み出してしまうわけです。

ただし、なんといっても脳が一番混乱するのは、やはり緊急性のない情報が緊急回線を通して届けられてしまうケース-神経の炎症を知らせる異所性発火-でしょう。回避行動のとりようのない情報が緊急回線によって届けられてしまうと、脳はどう対応していいのか分からず相当に混乱するはずです。

119番の通報を受けて、さあ出動だ!と消防署員がいっせいに立ち上がった刹那、実は電話の中身が署員の身内からのプライベートな連絡だったというのと同じです。そういう連絡に119番を使うな!携帯にメールしろ!ということになるわけです。

同じ異所性発火でも、肘をぶつけた際のそれには回線本体を襲った強い衝撃を知らせると同時に即時的な回避行動を要求する-2度と同じ場所をぶつけるな!-というメッセージが含まれるため、緊急性のある情報と見なすことができますが、しかし、その一方で回線の炎症を知らせるために自ら異所性発火をおこし続け、その上で自らを使って脳に連絡し続ける“神経痛(神経の炎症を知らせる信号)というのは、悪質クレーマー以外の何物でもありません。

本来液性伝達によって届けられるはずの、脳に考える時間を与えてくれるはずの、そういう性格の信号が緊急回線を通して幾度も幾度も連続して届けられるのです。脳にとってこれほどの異常事態は他にない言えます。

脳は1秒間に1000万ビットを超える情報を処理すると言われています。そのように超多忙を極める脳が、正規の手順を踏まない形で届けられる極めて異質な情報(異所性発火による信号)を柔軟に受け入れ、なおかつそれを弾力的かつ継続的に解析し続ける余力など絶対にないというのが、私の考えです。

本来メールで受け取っていた連絡がすべて電話で届くようになったら、電話回線はパンク寸前となり、社員はその対応に追われて本来の仕事がまったくできなくなり、ほとんどの企業はお手上げ状態です。私がCEOだったらあらゆる次元のプライオリティーを熟考したうえで、会社の機能を守ることを最優先するでしょう。そのために必要とあらば回線を切ることも厭いません。

脳だって同じです。もし私がペンフィールドの身体図(一次体性感覚野)だったら、そんな信号の受信は断固拒否します。間違いなく無視するでしょう。現実の電話回線の場合はモジュラージャックを抜けばすむ話ですが、もちろん脳はそうはいきません(ゲートコントロール説が不完全なことは周知の事実)。たからこそ、そもそも脳は、いいえ神様はそういうシステムを作らない!というのが私のスタンスです。

今回のポイントの整理!

①病変を知らせる信号はその緊急性の違いによって、伝達ルートも信号の性質も異なっている!

②1000万ビット/秒の情報を処理する脳にとって、緊急性のある情報とそうでない情報が区別されて届くシステムは生命線!

③そのような脳に「既存のシステムを無視した形で届く極めてイレギュラーな情報」を継続して受信し続ける余力などない!

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