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2011/12/15

⑥神経の変性≠痛み(その3)

《トップページ》

現代医学は神経痛という概念の中で『圧迫による神経の変性は異所性発火を引き起こし、これが神経障害性疼痛を発生させる』と説明しています。

一方で『変性した神経は自らの修復作業に集中しており、脳に信号を出し続ける余力などない。神経の変性が異所性発火をおこし続けることは通常あり得ないと考えるのが自然である』というのが筆者の見方です。


前回は「神経痛という概念を守るために現代医学が内包した論理的な矛盾」について、私見を述べさせていただきました。今回は組織の障害を知らせる痛みにはどのような意味があるのかをご紹介したうえで、異所性発火の核心に迫ってまいりたいと思います。

一般の方には少々むつかしい話かもしれませんが、別の章であらためて詳解する予定ですので、ここでは予告編のつもりでお聞きいただければと思います。

こちらでも解説してある通り、痛みという感覚は脳の中で生まれます。

脳は痛みという情報を得ることで自らに発生した異変を知り、それに対して適切な回避行動をとることによって、肉体ひいては遺伝子の生存を留保してきました。もし痛みという感覚がなかったら遺伝子の橋渡しをすることはできず、私たちが今ここに存在することはなかったでしょう。

ある染色体の異常によって感覚神経が備わっていない症例がそれを証明しています。先天性無痛無汗症の子供たちは自宅2階から飛び降りたり、煮えたぎった鍋の中に手を突っ込んだり、自らの顔にペンを突き刺したりといった常識外の遊びをします。

そのため生傷が絶えず、大人が常に付き添っていなければ生存への道が断たれます。生まれつき痛みを感じない子供たちに“痛みという感覚の意味”を理解させることはたいへんむつかしいことなのです。

幸いにして私は痛みを感じることができるわけですが、“外傷”における痛みを考えたとき、脳にとって最も重要な情報はその“発生現場”です。障害がどの場所におきたのかを正確に把握しないことには適切な回避行動をとることができません。足首を捻挫した瞬間、股関節の痛みを感じてしまってはまずいわけです。

そのため脳内の感覚中枢には人体の地図が描かれており、足首から発せられた電気信号がその地図上の足首の箇所に到達することで、脳は「足首が痛い」と感じます。このとき脳内に描かれている身体の地図(脳内マップ)はペンフィールドの身体図(一次体性感覚野)と呼ばれることがあります。

感覚神経のうち末端に侵害受容器をもつ求心性ニューロン(侵害受容ニューロン)の役割は、被害の性質と損傷個所の局在を脳に知らせることであり、その仕事はペンフィールドの身体図にマーキングされることで完了すると、私は考えています

マーキングとは「脳が痛み信号を受信すると、その場所に印がつけられる」という意味です。ペンフィールドの地図上に赤い印がつけられるとイメージしていただければよろしいかと思います。

あるいはその場所に小火が発生するようなイメージです。RSDではその小火が次第に炎上し本格的な火事になっていると喩えることができます。レセプターの増殖とともに消防車の出動を命令する側座核の機能低下が背景にあると私は考えています。

マーキングで大事なことは、感覚神経の末端センサー(機械受容器やポリモーダル受容器などの侵害受容器)から入った情報のみが正しく印字されるということです。センサー⇒神経線維(ニューロン)⇒脳という正規のルートで運ばれた情報のみがマーキングの対象となるのです。

組織が障害されると2次的な炎症が引きおこされます。この炎症を見張るスペシャリストが“サイレント受容器”です。この受容器は平常時は眠っていますが、炎症がおきたときだけ目を覚まして機械的な刺激に反応するようになり、痛み信号を脳へ送信します

この仕事人はパラニューロンの性質をもっているため、炎症を感知すると自ら神経ホルモン神経伝達物質を分泌し、血流を介して脳に届けさせるという別の顔も持っています(パラニューロンについてはこちら)。

このときパラニューロン性の伝達においてはペンフィールドの身体図に事前に印がつけられていないと、神経ホルモンはせっかく脳まで辿り着いても、自分がどこに着床すればいいのか分かりません。あらかじめ侵害受容ニューロンによって正確なマーキングが施されていることで、迷うことなくピンポイントに到達することができるのです。

つまり侵害受容ニューロンによる脳内マーキングとサイレント受容器による炎症監視という2本柱が、痛みの存在理由なのです。

これを侵害受容ニューロン(nociceptive primary afferent neurons)とサイレント受容器(silent afferent neuron)の連係作業による監視システムという意味で、私はnociception-silent monitoring system(NSMS)と呼んでいます。

たとえば関節に炎症が発生した際、関節受容器のタイプⅣがそれを感知して侵害受容ニューロンによるマーキングが行われ、続いてサイレント受容器による炎症監視が行われます。

サイレント受容器は炎症の存在をパラニューロン性液性伝達にゆっくりと脳に伝え、機械的な刺激をニューロン性緊急回線に瞬時に伝えることによって、組織の回復を見守っていると考えられます。

炎症そのものは組織回復のために通らねばならぬ道筋と言えるわけですが、修復作業中の現場にとって一番困るのは、なんと言っても地震機械的な刺激の発生です。その見張り役がサイレント受容器なのです。

この仕事人が地震を感知することで、脳は現場にとって“迷惑な異変”を知ることができ、「まだ作業中だったのか。しばらく現場に地震がおきないように気をつけてあげよう」と、局所の安静を保とうとする意思が生まれるわけです。現場が足首であれば「勢いよく足をつかないようにしよう」「無理に曲げないようにしよう」となります。

現場が消化器官の場合、炎症部位だけを安静に保つことは不可能ですので、消化器官全体を休ませる以外に方法がありません。すなわち「食物が入ることによる蠕動運動をおこさせないように、そして食物による粘膜への刺激をおこさせないように“絶食しよう”」という意思が生まれるわけです。ただしこの場合の意思決定は個体によって異なります。反対にもっと食べようとする者、薬で治そうとする者など、その対応は様々です。

サイレント受容器は深部体性組織-とくに骨盤、内臓、関節など-の至る所に配備されていますが、これが存在しない場所に障害が発生すると少々厄介な問題がおこります。

なかでも感覚神経のなかに被害が発生した場合、脳は末端センサーからの障害シグナルを正規に受け取っていないため、ペンフィールドの身体図にマーキングすることができません(投射機能不全)。つまり脳は被害個所を特定することができないのです。

前章でお話しした「肘の神経を直接ぶつけた際の異所性発火」においては、肘から指先までの広範囲にわたって激烈なしびれ感を覚えます。これは脳内マーキングがされていない状況での異例中の異例とも言える緊急警報ですから、それを受け取る脳にとっては実に衝撃的な信号となっているわけです。数百年に一度あるかないかという震度7クラスの巨大地震を知らせる信号はあり得ないほどに強烈な感覚をもたらすということです。

炎症下にある神経の場合、閾値が低下するために震度4レベルの地震でも異所性発火をおこしてしまうということは容易に想像できます。ただし通常の日常生活を送っている生体では、神経組織だけを狙い撃ちするような震度4レベルの局地的な地震はめったなことでは発生しないというのが私の考えです。そのような地震は研究者らが行う実験モデルの中だけの話だということを前章でお話しさせていただきました。

炎症下の神経にとって、もっとも切実な問題は災害現場にサイレント受容器がいないということです。そのため神経は自らの炎症を自らが見張らなければならず、自らが仕事人の代役を務めなければなりません。サイレント受容器にはパラニューロンの性質があるため、炎症を感知してそれを血行性に伝達する働きがあるわけですが、一方の感覚神経本体にはもちろんそのような機能はありません。

サイレント受容器の働きを地震観測装置に喩えると、計測装置に記録される無感地震炎症の存在をメール液性伝達で送信し、有感地震機械的な刺激をホットライン緊急回線での電話で連絡すると言うことができます(サイレントニューロンの中には脳まで到達していないものがあり、その場合にはメール送信のみが行われていると推察されます)。

それではメール機能をもたない神経本体が仕事人の代役を務めなければならない状況では、どうやって地震観測を行うのでしょう?

これに対しては2つの推考が成り立ちます。

ひとつは、メール機能をホットラインで代用するという考え方です。自らが炎症を感知して異所性発火をおこし続け、さらに機械的な刺激にも反応する。つまり無感地震と有感地震の両方に対して常時ホットラインを使用し続けるという考え方です。

そしてもうひとつは、メール機能がない以上あくまでも炎症の存在を知らせることはできず、機械的な刺激のみを感知して異所性発火をおこす。つまり有感地震だけをホットラインで連絡するという考え方です。

前者が現代医学の主張であり、後者が私の主張です。

現状において、科学の土俵で現代医学の訴えを完全否定するだけの“完璧な証拠”は今の私にはありません。

しかし臨床の土俵ではこちらに分があります。何軒もの病院で神経痛と診断されてきた症例に対する臨床効果が、そしてその再現性の数々がすべてを物語っているからです。

もし法廷で戦うとしたら、私側の証人申請は数千人規模になります。実験モデルの当事者たち(ラット、マウス、犬、ネコ等)の証言がどんなに集まろうと、こちらの優位はゆるがない…?

次回は私側の証人として“脳”に証言台に立ってもらう予定です。

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