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« 5)関節軟骨の神秘-驚異の摩擦係数- | トップページ | 椎間板ヘルニアの真実-医学史に残る巨大な錯誤- »

2013/02/22

小脳へのアクセス-なぜ“関節”なのか?-

≪トップページ≫

徒手医学においては、筋受容器(筋肉センサ)を重視するものと、関節受容器(関節センサ)を重視するものがあります。現状は、その多くが前者の立場をとっていますが、小脳にアクセスするためのインターフェースという視点で見た場合、より適しているのは後者だというのが私の見方です。

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その理由として、筋受容器の働きがフィードバック制御であるのに対し、関節受容器のそれがフィードフォワード制御であるという私見。さらに関節受容器は皮膚受容器と協同して、小脳における予測制御にも深く関わっている可能性(自分で自分をくすぐることができない理由について小脳の働きが取り沙汰されている)が挙げられます

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一般に関節受容器は筋受容器と同様に比較器(小脳)におけるフィードバック制御に与っていると考えられています。その論拠の一つとして、関節の位置覚を関節受容器が担っている―例えば、閉眼した状態で肘を曲げた際、自分の肘がどの程度曲がっているのかを感じることができるのは関節受容器からの情報の入力があるから―という説を挙げることができます。

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しかし、近年「関節の位置覚においては、実は関節受容器よりも筋受容器が優位にある」ことを示唆する論文が複数発表されたことにより、現状は「関節受容器が位置覚に貢献することはない」という見方が多数派になっています(神経心理学コレクション タッチ 岩村吉晃著より)。

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その一方で、私見―関節受容器の働きをフィードフォワード制御として捉える視点―によって、小脳と運動器の新たな関係性(可能性)を見出すこができます。
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                      ※⇒関節受容器によるフィードフォワード制御
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この拙論に従えば、関節受容器は筋受容器が反応する前に外乱(運動器の応力変化)を感知し、小脳における運動プログラムの既定値(筋トーヌスおよび関節軟部組織の緊張レベル)を書き変える窓口となっている可能性が高い。であれば、小脳へアクセスするためのインターフェースとしては、筋受容器よりも、フィードフォワード制御を担っている関節受容器のほうが適任と言えるのではないか、というのが私の考えです(皮膚受容器に関しては、機会を改めて詳述する予定です)。

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BFI【ブレイン・フィンガー・インターフェース】が痛みを消すメカニズム。いまだその詳細は不明ですが、おそらく以下のようなものと推察されます。

皮膚・関節の感覚受容器を介して、極めて繊細な刺激情報を同時多発的に脳に持続入力させることで、小脳(もしくは前庭核)の運動プログラムのアップデートが行われると同時に痛み記憶へのリンクコードが書き換えられるのではないか…。
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小脳が制御する運動プログラムにアクセスするインターフェース(差し込み口)として最も安全かつ確実な場所は「関節近傍の皮膚・骨の複層部」であり、極めて微かな刺激であっても効率的に脳へ伝達されると同時に機能回復に向けた解析処理が実行される。そのため、あらゆる難治性疼痛に対してこのインターフェースは有効たり得る。

他方、筋肉はその感受性と閾値が粗大であり、かつ外乱を検出する能力が関節より劣るため、脳に働きかけることを目的とした場合、比較的強い刺激介入が必要である。そのためアロディニア症例-
例えばCRPS(RSD)-に代表される疼痛感受性が亢進している症例に対してはインターフェースとして適さない

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Cerebellum10.

前稿で紹介した実験-倒立メガネや左右逆転メガネによって天地左右が逆さまになっている人間の視野が、数日後には正常化してしまうという驚きの事実。このとき、被験者はじっと寝たままでは視野の正常化は起こらないが、積極的に動き回ることで、手足をはじめとするさまざまな触覚刺激の入力があると、視野の補正解析、処理が成される-も、BFIと同様のメカニズムではないかと私は考えています。

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近年EBMの成果により、腰痛治療における安静臥床が否定され、可能な限り動きを保持したほうが痛みの改善に繋がりやすいという最新の知見が、まさしく私論の証左と言えます。
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小脳にある神経細胞の数は大脳よりはるかに多いわけですが、その理由を考えたとき、小脳が予測制御コンピュータとしての能力を進化させたためではないかと私は考えています。
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ベンジャミン・リベットの実験によって、“意思の創出350ミリ秒前”に運動準備電位が生じることが示されていますが、「小脳を摘出したサルの運動準備電位が顕著に減っていた」という報告を顧慮すると、小脳からの情報入力が運動準備電位を起こさせていると考えることができます。ということはつまりヒトが運動を行う際のニューロン発火の起源は小脳にあるという見方が…。この視点がさほど的外れでないと仮定するならば、小脳は無意識下で究極とも言える予測制御を行っていることになります。
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くすぐったいという感覚は小脳が予測した触覚刺激と実際に触られた時間的なずれに起因するという英国のS. Blakemoreらによる報告や、同じく英国のA. Ploghausらによる実験-赤と青のランプがあったとき、赤いランプがついたときにだけ熱刺激がくる-を続けると、やがて赤いランプをつけておくと、熱刺激を与えないでも小脳は熱刺激がきたときと同じような活動を見せる。すなわち赤いランプを見たときに、“次に熱刺激がくるぞ”と小脳が予測しているようだという報告。

さらに拙論-小脳は関節受容器を介してのフィードフォワード制御を担っている-に加え、小脳が運動準備電位の起動スイッチを押しているとするならば、小脳は究極の予測制御コンピュータ(おそらく量子コンピュータに近い作動機序)と言えるのではないかというのが私の見方です。これについてはこちらのページで詳しく解説しています。
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近年、fMRIやNIRSといった脳活動の映像化によって、慢性痛における小脳や島皮質の活動異常が報告されています。アメリカで注目を集めている中枢感作(central sensitization)には、小脳や島皮質の問題も包含されているのではないかというのが私の視点です(島皮質についてはCRPS(RSD)の解説ページ」をご覧ください)。

Touhisitu_2
ただし、こうした検査機器による映像化は代謝レベルの変化(血流等)を描出しているのであって、決して“ニューロン活動そのもの”を現しているわけではないことに留意する必要があります。

脳はおよそ1千億個のニューロン(最新の説では800億)から成っており、その一つ一つが数千~1万のシナプスを形成します。したがって脳内に存在するシナプスの数は1千億×1万弱。この時点で既に天文学的数字になっていますが、さらに、こうしたニューロンとシナプスによって形成されるネットワークの配線パターン(順列と組み合わせの数)は、全宇宙に存在する素粒子の数を超えるとさえ言われています。そして個々のニューロン活動は極めて複雑なシステムに基づいていることも分かっています(抑制性ニューロンや逆方向伝播、ニューロン間の動的接続、ヘッブ則によるパーセプトロン説等)。

これらを踏まえた上で、複雑系の象徴とも言える脳の情報処理システムを考えたとき、画像に描出される血流異常のみを指して、単純に「hyper(亢進)か、hypo(減弱)か」という次元で論じていいものかどうか…。

私は「小脳や島皮質において、そうした複雑極まりないニューロン活動が、いわゆる活動地域パターンの乱れをおこし、その結果として血流異常が生じている可能性があり、その場合、“血流亢進”イコール“ニューロン活動の一方的な亢進”(その逆も含め)と単純に解釈していいものかどうか…、今後の脳科学の成果を慎重に見極めていく必要があると考えています。

PTSDに代表されるトラウマ治療で実績を挙げているEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作 と再処理法)におけるニューロン活動の変化も、倒立メガネの実験における視野の正常化においても、おそらく小脳の働きが関与していると推度されます。

Shounou4_2                  NHK「クローズアップ現代」トラウマ治療の実態より一部加工

とくにEMDRにおける臨床効果と、BFI(ブレイン・フィンガー・インターフェース)における臨床効果には脱感作という共通したメカニズム-EMDRは視覚系ニューロン、BFI は体性感覚系ニューロンを介しての脱感作-が潜在しており、両者ともにセル・アセンブリ(特定の情報を表現する機能的ニューロン集団)におけるニューラルパターンを変える効果があるのではないか、さらに小脳と島皮質のニューロン接続によって、島皮質の機能回復にも寄与するのではないかというのが、私の考えです。
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近年注目を集めているデフォルト・モード・ネットワーク(タスクを課されない安静時に活動する特殊神経回路)の活動意義とBFI との関連性についても今後は注視していく必要があります。
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さらにBFI の効果(脱感作)を裏づける興味深い事実があります。脳と触覚の関係です。

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生物がその進化の過程で、最初に脳の原型を獲得したと言われるヒドラ(腔腸動物)には口と腸と肛門しかありません。パイプのような単純な構造を持つヒドラの口のまわりには、神経細胞が集まって円環状に連なっています。口に触れたものが食べていいものかどうか判断するためです。この触覚器官が進化発展したものが“脳”だと言われています

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しかもヒドラの口にあった神経細胞はその後、皮膚のメルケル細胞、内耳の細胞、舌の味細胞、眼の網膜細胞などにも分化していったのです。つまり五感を構成するあらゆる細胞の起源は触覚にあるということです

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このように五感の中枢とも言うべき触覚が、人間にとっていかに重要な存在であるかを裏づける証拠があります。

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感覚遮断実験-アイソレーションタンク(皮膚表面温度と同じ34度に保たれた硫酸マグネシウムの水溶液に満たされた密閉タンク)に裸の人間を入れて浮かべる実験-を行うと、五感の遮断とりわけ触覚刺激が限りなくゼロに近づく状況が体現された結果、被験者は体外離脱に似た感覚を覚えます。この実験に参加した立花隆氏は「肉体の中で自我が“ずる”と回転した」と述べています。

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前稿で紹介した実験-倒立メガネや左右逆転メガネをかけた人間の視野が、触覚刺激によって正常化されてしまうという事実-、全身の触覚を奪われた人間が体外離脱のごとき体験をするという事実、これらから憶断させられるのは、人間を人間たらしめているものは五感とりわけ触覚ではないかということです。

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しかも、この触覚こそがあらゆる五感の起源であり、脳の起源でもあるというのですから、触覚と脳は極めて密接な関係にあると言うことができます。

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触覚のなかでも、皮膚直下に骨・関節がある部位がもっとも多彩かつ大量の情報を脳に届けており、BFI はピンポイントにその場所をインターフェースとして利用する技術だということです。長期間にわたってBFI を継続されている患者さん方に見られる不思議な現象-低体温の回復、視力や視野の回復、不眠の改善、頭痛の改善、胃腸の回復、便秘の改善、冷性の改善、加齢臭を含む体臭の改善など-も、おそらくは繊細な触覚刺激が中枢における脱感作を促すことで、新陳代謝や自律神経の働きを回復させた結果であろうと推測されます。
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かつてデカルトは「我思う。故に我あり」という名言を残しました。しかし、私は「我感じる。故に我あり」という至言を後世に残したいと思います。
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世界中にあるタッチセラピー、さらに感情解放テクニックと称されるTFTやEFT、さらに矯正術を除く徒手療法の効果においても、その全てにおいて“脱感作”に準じる何らかの共通メカニズムが包含されており、人間の手指によって“触る”という行為は、脳にアクセスしているに他ならないということです。同じ脳内でも、とくに小脳への働きかけが強いテクニックほど効果が高く、かつ人間の手指による繊細な触覚刺激は(画像上の)小脳の過活動を収束させる効果があるというのが私の見方です。
≪下の画像はTBS系列「ゲンキの時間」より一部改変≫
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            BFIの最新技術はこちらのページをご覧ください。
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昨今の徒手医学においては、脊椎マニピュレーション、関節モビリゼーション、マッケンジー、AKA-博田法などに代表される関節への介入技術が知られていますが、その効果発現は最終的に脳のプログラムが書き変えられた結果に過ぎないと、私は考えています。
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たとえばAKA-博田法は仙腸関節をメインターゲットに据える技術で、治療前後のSLRの変化を評価します。仙腸関節を徒手的に操作してSLRが改善する理由は、脳内の運動プログラムに占める仙腸関節の割合が大きい-ペンフィールドの脳内地図に占める顔や手の領域が広いのと同様に、小脳もしくは前庭核に保存されている運動プログラムに書き込まれている仙腸関節の情報量が多い-からではないか…?

なぜ情報量が多いかと言えば、仙腸関節は自説「脊椎は脳を守る骨格ダンパー」にあるとおり、上半身を支える倒立振子モデルの基底部に相当すると同時に、人体最大最強の靭帯群(粘性弾性体)を要する“アクティブ制震ダンパー”として機能しているから…?

Pend4_2Touritusinsi22Sacro

地震工学における建築において、“アクティブ制震”は加速度センサ等によるコンピュータ制御を意味しますが、人体における加速度センサは関節受容器であり、コンピュータは脳に相当します。仙腸関節が制震ダンパーとして機能するとき、脳で処理される関節受容器からの情報量は膨大なものがあり、そのため仙腸関節への徒手的な介入は超精密機械をいじるのに等しいと言えるのでは…。
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BFI の臨床においてもSLRの劇的な回復は日常的な光景ですし、おそらく仙腸関節をメインターゲットにしていない他の徒手療法においても同様のはず…。ティッシュを奥歯に挟むだけで体幹の前屈が柔らかくなる事実を忘れてはいけない…。要は物理的な介入によって脳内の運動プログラムすなわち特定の情報を表現する動的な神経回路が変化すると、それが肉体の動きに反映されるに過ぎない…。
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ただし、運動プログラムの書き変え(アップデート)と痛みの消失はイコールの関係ではないことに注意が必要です。AKA-博田法であれ、他の徒手療法であれ、肉体への介入がSLRを変化させても、痛み記憶とのリンクが解除されなければ、「足だけ上がって、痛みは不変」という現象が起こるからです。
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したがって、運動プログラムのアップデートと同時に痛み記憶とのリンクを解除させるためには、脳内の抵抗勢力(感情プログラムの負の働き)を抑えたいわけで…。そのためには患者さん自身が分かりやすい(納得しやすい)治療内容、あるいは宣伝効果を高めることによるセッティング(名医と銘打たれたテレビ番組への出演等)によるプラセボ効果の発動が威力を発揮します…。

ヒトという生き物は無意識に近い領域で、深く、深く「腑に落ちた」時はじめて感情プログラムの書き換えが為され得る…。無意識のより深いところまで「腑に落ち切った」患者さんはいかなる療法にも“反応”します。感情プログラムの一部がアップデートされているからです。
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一般に痛みの臨床では「VAS等による痛みの改善指数」より「感情的な“満足度”の指数」のほうが強い影響力がある、すなわち患者さんの受診行動は痛みの実質的な改善よりも“満足感”が優先される傾向にあることが、EBMで示されています。

これは多くの治療家が感じていることでしょう。であるならば、当分の間はハード論(肉体上の原因論)を掲げていたほうが“痛みの仕事”はしやすいと言える…。治療概念が分かりやすいほうが当然“腑に落ちやすい”わけで…。

他方、BFI のようなソフト論(痛みは脳の問題であるという原因論)に対して“腑に落ちる”患者さんはほとんどいない…。つまり現状は極めて一般人に理解されにくい…。
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分かりにくいソフト論より、分かりやすいハード論(ゆがんでいる!ずれている!ひっかかっている!筋肉が落ちている!)のほうが世人に受け入れられやいわけで、おそらく今後も椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症に代表される画像診断(形態学上の診断)の疾患群に対して、「こんな運動をしたら良くなった!」「こんな矯正をしたら治った!」という情報がマスコミ(健康番組や健康雑誌等)を賑わすことでしょう。
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患者さんの脳のプログラムを書き換える手段は世界中に溢れているわけで…。要は脳との相性の問題で、たまたまその人の脳にフィットする手段と出会うことができれば、結果がついてくる…。

人々にとって分かりやすくシンプルな手法、そうした療法にあって内容をアピールする宣伝力、表現力の優れているものがとりあえず認知され、世人に受け入れられていく…、それが“今”という世の中…。時勢を機敏に感じ、空気を読み、大衆に迎合する力、そういう能力のある医師や治療家たちによる書籍が書店の健康コーナーを埋め尽くし…。
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とは言え、徒手医学の中には脳にとって刺激容量過多と推測されるものや、仙腸関節のように技術精度のリスクが大きいインターフェースをメインターゲットにしているものがあり、これらにおいては“副作用”もしくは“医原性悪化”と常に隣り合わせ。つまり患者さんにとって“結果オーライ”とばかりは言えない現実があるわけで…。

そういう意味において、理論と手技の整合性に優れ、なおかつ究極とも言える安全性を兼ね備えているBFI は、痛みのソフト論が広く認知されるであろう未来社会において、世界の徒手医学を根底から変える存在になり得る、というのが私の手前勝手な希望的観測です。

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