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« 椎間板ヘルニアの真実-医学史に残る巨大な錯誤- | トップページ | 痛みの成因9)ストレス説の皮相性を斬る!-脊柱管狭窄症と“気づき”の道程- »

2013/08/31

痛みの成因8)ストレス説の皮相性を斬る!-ストレス≠痛み-

《トップページ》
前稿では『内観力を封印している方に“ストレス説”は無力』という話をさせていただきました。

ここからは『痛みのソフト論”を伝える際、“ストレス”や“心”といった用語の使用はくれぐれも慎重に』という持論を展開してまいりたいと思います。

昨年、岐阜新聞に掲載された朝日大学村上祈念病院准教授のコメント…

『最近の研究で、慢性腰痛症が患者の心理的、社会的因子と関係していることがわかってきました。平たく言うと、ストレスが腰痛に関係しているということです。近年では精神・心理学的アプローチによる治療が行われています。患者さんの抱えるストレスや悩みに医師が耳を傾け、患者さんに不安や悩みを話してもらい、気持ちを楽にしてあげることで、腰痛の軽減をはかるというものです。一種のカウンセリングともいえるこの方法は、一部の患者さんには有効です」⇒記事全文はこちら 

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このように医学界は痛みの成因について、従来のハード論からソフト論に舵を切り始めており、なおかつ心理社会的因子という旗印を掲げて事実上のストレス説を展開しているわけですが、“ストレス”という切り口では、真の救いにはなり得ないと私は思っています。

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なぜそう思うのか?その理由を説明するため、私はこれまで内観哲学の問題に焦点を当ててきましたが、痛みの臨床において、そもそも“ストレス”がいかに皮相的な概念であるかを強調させていただきたいと思います(その具体例ついては次回詳細に…)。その前に、ストレスについて簡単におさらいしておきます。

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本来ストレスという用語は、材料力学において、物体に力が加わった際の内部応力を指したものです。医学用語としては、1930年代にカナダの生理学者ハンス・セリエが、ストレス学説を唱えて以来、大局的な病因論として認知されており、さまざまな病気がストレスによって引きおこされることは周知の事実です。

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昨年、私は痛みの原因を脳のシステムとして捉えたソフト論(痛み記憶の再生理論)を発表し、脳に影響を与える要因として“心身環境因子”という概念を提唱しました(こちらのページで詳しく解説しています)。

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現代人が抱える体調不良や生活習慣病、そしてガンから脳卒中に至るまで、そのほとんどは“環境病”に過ぎず、痛みの問題もまさしくその渦中にあるという見地から、“心身環境因子”という言葉を造語し、私はこれを外的要因と内的要因に分けました。この両者はそれぞれ外的ストレッサーと内的ストレッサーに言い換えることができます。ちなみに外的ストレッサーには「けが、肉体労働、不自然な姿勢での作業、長時間の同一姿勢など」があり、内的ストレッサーには「薬害、食害、心的ストレスなど」があります。

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先述したとおり、医学界はソフト論への移行を進めていますので、今後痛みの臨床現場で使われるストレスという言葉は、“心的ストレス”を指すケースが多くなっていくであろうと推察されます。

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ここで私が強調しておきたいのは、『“ストレス”イコール“痛み”ではない』ということです。心理的なストレスはたしかに痛みの引き金になり得ますが、あくまでもきっかけの一つに過ぎません。現代医学は心と痛みの関係を解明したわけではなく、「痛みのメカニズムははっきり分からないけれども、心の問題が関与している」と言っているだけなのです。

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胃潰瘍では「ストレス⇒胃の粘膜の潰瘍⇒胃の痛み」という分かりやすいロジックがありました(今ではここにピロリ菌が加わります)が、腰痛の場合「ストレス⇒〇×△⇒腰の痛み」において、〇×△がいったい何なのか定かではありません。また、そもそも肉体病変は必須なのかどうかも分かっておりません。つまり心的ストレスを受けた結果、肉体に何らかの病変が生じて痛みを出しているのか、それとも脳が直接痛みを引きおこすのか、そのあたりのことは言明されていないということです。痛みの発生源は肉体なのか、それとも脳なのか、いったいどちらなのか?医学界のスタンスは不明ということです。

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こうした現状にあって、仮説の域にとどまる話で誠に恐縮ではありますが、不肖三上が次のように喝破しているという図式になっています。

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「肉体は関係ない!あくまでも脳の問題である!ストレスを受けると、脳内においてニューロン活動の不調和(偏り)が生じ、小脳や島皮質の活動異常に伴って、痛み記憶を形成するセル・アセンブリ(神経回路)が賦活化される。加えて不安や嫌悪感の高まりによって扁桃体の過活動や海馬の機能低下が引き起こされ、セロトニンやオキシトシンの分泌量が低下する。将来的に脳機能の検査技術の進歩によって、いずれ多くの痛みが脳の次元で説明されるようになる!

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トリガーポイントなどを前面に掲げて、○×△の箇所に「筋肉の血流低下」を当てはめる考え方もあるようですが、私は筋に現れる変化は結果であって、原因ではないと考えています。まず脳の問題が先行して痛みが現れ、その痛みに対して個体性能に則した自律神経の反応がおこり、その結果さまざまな理学所見(筋の虚血、過緊張、低緊張、腫脹、浮腫等)が生み出されてくるというのが私の考えです。

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運動器の痛み、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、CRPS(RSD)、うつ病性疼痛、慢性頭痛等には、共通した潜在メカニズム-中枢感作(central sensitization)-が内包されており、その実態は“痛み記憶の再生”に過ぎない。トリガーポイント注射の効果においても、最終的には中枢レベルに働きかけた結果だというのが私の推考です。

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ですから、脳(ソフト)の問題が解決すれば、自ずと筋肉(ハード)の問題も改善します

痛みの原因はあくまでも脳内におけるシステムの問題です。ストレスに対して脳がどのように反応するのかによって、症状の現れ方が違ってきます。痛みになるときもあれば、しびれになるときもあれば、凝りにになるときもあれば、何も出ないときもあります。

ストレスイコール痛みではなく、「ストレス➡脳内環境の変化➡痛み」なので、その時々の脳の状態、あるいは脳の個体差によって痛みになるかどうかは著しく変わってくるということです。

ストレスに強い脳、ストレスに弱い脳があるということです。ちなみにふだんから五感の刺激をポジティブに感じたり、マインドフルネスなどを日常に採り入れることでストレス耐性を高めることが可能と言われています。



椎間板ヘルニアにおいては(当ブログの随所で取り上げているとおり)、正常人にも多数見つかることが判明しているため、今では「MRIの結果は参考所見に過ぎず確定診断にならない」ということは、痛みの専門家のあいだではもはや常識です。

それを裏付けるようにヘルニアの手術件数は減少の一途をたどっています。ヘルニアと痛みの関係が一致しないという事実は、手術そのものの妥当性にクエスチョンマークがついていることを意味しますが、それではなぜ“疑問符のついた手術”で痛みが消える症例があるのか?

これについては全身麻酔による脳への鎮痛効果とプラセボ効果だと考えられます。手術結果がプラセボ効果に過ぎないと思われる疾患は他にもいくつかありますが、なかでも脊柱管狭窄症の一部-神経脱落症状(麻痺所見)とは別次元のしびれ(錯感覚)や痛みを主訴とするタイプ-は間違いなく“痛み記憶の再生”と“しびれ記憶の再生”に因るものです。

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私は手術後の再発症例をたくさん診てきましたが、ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術後に再発した方々は大きく2つのタイプに分かれます。

ソフト(柔軟)な思考回路を持っており、“ソフト論”を受容できる-自らの認識を変えることができる-人たち。かたや強固な思い込みと思考の硬直があり、二重の意味での“ハード脳”に陥っている-どうしても心と痛みの関係を受け入れることができない-人たち。現状においては、後者のタイプが大多数を占めます。

後者の方たちは、もしかすると“島皮質の活動低下(自身の感情を認識する力が弱い)”を抱えているのかもしれませんし、あるいは手術に踏み切った自身の判断、周囲からの勧め、医師の自信たっぷりな説明、MRI 画像を見せつけられた際のインパクト…、そうした過去を全否定することができない心性が無意識にあるのかもしれません。

しかし、その後の人生の流れが好転しやすいのはどちらか…、もはや言うまでもないでしょう。もっともソフト論の受容ができなくとも、
些細な“気づき”があれば、それが救いにつながることも…

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次回のテーマは“気づき”。

痛みの体験にはどんな意味が隠されているのか。人は痛みをとおして、何を学び、何を知り、どんな“気づき”を体験するのか。次回はそんな話をしてみたいと思います。

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