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« 足関節捻挫における f(ファンクショナル)-プライトン固定 | トップページ | 10月30日プライトン固定セミナー(4thステージ)のご案内 »

2016/09/16

自律神経測定による“治療効果の見える化”と代替報酬

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梅雨本番を迎えた過日の昼下がり、私の携帯が突然鳴り響きました。

「もしもし、山口(仮名)です。私じゃなくて、主人のほうの予約なんですけど…、急で申し訳ないんですけど今日は行けそうにないので…」というキャンセルを伝える連絡。

「主人は今、眼科にいるらしくって…、眼圧が急に上がって頭痛やら気持ち悪いとかで…。なんか医者から説明があるというので、私も行かないと…。すみません…」

患者さんの慌てた様子にただならぬ事態を察しつつ、私は携帯のイヤホンを耳から外しました。もしかして急性緑内障発作?まさか失明なんてことにならなきゃいいけど…。その3日後、連絡の主(奥さま)が来院しました。

「先日は夫が急なキャンセルで…、すみませんでした。結局、緑内障発作とかなんとかで…、レーザー手術で眼圧は下がったんですけど、近いうちにもう片方の眼も…」

「そうでしたか。で、ご主人は今、どんなご様子で?」

「それが…、昨日まで静かにしていたんですけど、今朝になったら急に張り切っちゃって…、しまいには仕事に行くって言い出して。でも職場に着いたら、息子から休んでないとダメって言われて、追い返されて…。今は、家でおとなしくしてます」

3代続く製麺所を切り盛りする山口さん夫婦との付き合いは2年ほど前から。最初は奥さまがいらして、その後ご主人も通うように…。ご主人の主訴は背痛と手のしびれ。82歳というご高齢にも拘わらず、盆暮れを除きほとんど休みなく働き続けています。しかも肉体労働と経営管理の両方を…。

親族経営-名義上の社長は兄だが、現場の仕事は弟すなわち本人任せ-にありがちな複雑な背景を抱えているため、来院する度に「兄は何もしない。ロータリークラブみたいな名誉職ばかりやっていて…、受注から発注まで、お金の計算も、全部自分が…。今年に入ってまだ1日も休んでない…」と毎回同じような愚痴をこぼして帰るという流れが続いていました。

初診時に脳と痛みの関係を概説した上で、「そうした感情バランスの乱れが脳疲労を起こして痛みやしびれに…。ですから…」と、心身を休ませることの重要性を強調しましたが、そうした次元の話に対しては理解不能のご様子…。

結果、会話が成立することはなく、こちらとしてもこれ以上理屈っぽい話をしても…との思いから、毎回本人の気が済むまで、とにかく話を聞いてあげて…。そして施術という繰り返し。そんななかで起きた眼科領域の重大発症。

本人への働きかけが功を奏することはない以上、もはや奥さまに伝えるしか…。

「緑内障の急性発作はストレスが影響することもあるらしいのですが、これまでのご主人の話の内容から察するに、相当精神的に参っているご様子でした…。そうしたなかで今回ご主人に起きたことは決して看過できない気が…。年齢的にも…。ちなみにご主人は自身の引退についてどのように考えていらっしゃるのでしょう?何かそれらしい話をしたことは?」

「そのことは私も以前からずっと気になっていて…」

「たしか息子さんもいっしょに?」

「ええ、そうなんです。だから、もういい加減息子に任せて…」

「奥さまのほうから具体的にそうした話を切り出したことは?」

「ええ、前に一度、はっきり言ったことがあるんですよ。そろそろ引退してもいいんじゃない?って。そしたら本人も分かったって言うから、じゃあみんなに話そうっていう段階になったら、やっぱり辞めないみたいな感じになって、結局そのまんま…」

「本人のお気持ちとしては、お兄様との関係や何か待遇みたいなところに不満があるだけで、基本的には仕事をやり続けたいというか、仕事が好きということなんでしょうか?」

「そのあたりのことは、私もよく分からないんですよね。“俺がやらねば”みたいなものは感じるんですけど、でもあの人は趣味もないし、典型的な仕事人間…。もし辞めたらボケちゃうんじゃないかっていう…」

「そこらへんは本人も何か感じているところはあるかもしれませんね。でも現状を放置することが賢明とは…。もしあれだったら…、一度、家族会議でも開いて、ご主人の今後をどうしたらいいか皆さんで話し合うっていうのもアリかもしれないですよね」

「ええ…、そうですね」

こんな会話を奥さまと交わしたあと、いつも通りの施術をして終わりました。ところがその翌日、私の携帯が鳴り…。「先生昨日はありがとうございました。でも、今朝から頭痛と耳鳴りが…。それに頭がふわふわして、すごく気持ち悪いんです。今日どこかで空いている時間ありますか?」という連絡が。

そのとき、私は「しまった」と思いました。当の奥さま自身も他にいろいろと心労を抱えている中、あのような話をしてしまったせいで、奥さま自身のメンタルにも相当な負担をかけてしまった可能性があるからです。あのあと、私の想像では「家族会議かあ…、けれども…、そもそもあの人は自分の考えを言わないし…。ホントどうしたらいいのかしら?」と。

そして診察当日。思った通り、奥さまはかなりナイーブな表情で来院されました。さて、こちらとしてはどうすべきか?ここでまた「ごめんなさい。昨日あんな話をしてしまったせいで…、山口さんに余計な心配をおかけしてしまって…」といった内面的な話(蒸し返すような流れ)は火に油を注ぐだけ。2日連続して患者さんの内面に踏み込むようなことはできれば避けたい。当の本人にとっても許容し難いはず。

であれば、こういうときは少し目先を変えて現状に対して安心感を持てるようなアプローチに…。さて、どうする?やはりこういうときは“助っ人”の出番…。

「今日は…、最初に自律神経のほう測らせてください。ここ最近ずっと…、測っていませんでしたし…、たいぶお疲れのご様子…」

Tas99v
私が導入している自律神経測定器は『パルスアナライザープラスビュー TAS9VIEW(上の画像)⇒販売代理店の解説ページ』。

これによって山口さんの自律神経機能(ANS)を測定したところ、以前に比べSDNN(RR間隔標準偏差)が顕著に低下していることが分かりました。SDNNはHRV(心拍変動解析)においてANSの活性度を示すと言われており、高ければ高いほど健康であると考えられています。健康な方は40~100くらいの値を示し、10を切るとかなり深刻な病状にあると捉えられます。

私のこれまでの臨床経験からすると、20を切ると相当なダメージを抱えていると憶断されます。何を隠そう私自身一度だけ17という値になったことがあります(私の健康時は40~50くらい)が、このときは胃腸の持病が過去最大級に悪化し、本能寺で信長が最後に発したと言われる「是非に及ばず」という文言が脳裏をかすめたほど(本当に大袈裟でなく1カ月半ものあいだ絶食に近い状態でした)。

私の話はさておき、このとき山口さんのSDNNも15.2 だったのです(3か月前の測定数値は28.9 でした)。さらに交感神経機能の低下と同時にANSバランスが著しく悪化しており、肉体レベルの疲労を示す指数(PSI)も82 という高値

つまり肉体の疲労度が極めて高い-身体が疲れ切っている-状態であることが分かったのです。下が実際の自律神経測定結果です(クリックすると拡大します。スマホの方は「PC表示に切り替え」たほうが見やすいようです)。

Ans00_2
本人にパソコン画面(上の画像)を見せながら、「いやあ、たしかに…、相当しんどいでしょうね。このSDNNという数字を見てください。これは自律神経の働き具合を示す値なんですけど、これ…、かなり低くなっちゃっているんですよ。過去3回の山口さんのデータでは30前後だったんですけど…。交感神経の働きもかなり落ちていますし、自律神経のバランスもこれまでにないほど崩れてますね。肉体疲労度も82ですし…、本当に身体が疲れ切っている状態です」

すると、山口さんの目元が微かに緩んで(微表情に現れる安堵の変化)、「やっぱり…、今までどんなに疲れていても朝はすっと起きれていたのに最近は…。ほんとうは6月に主人と温泉に行こうって…。けれど、直前になって夫が急に行きたくないって…。やっぱり行ったほうが良かったのよねえ。そうすればリフレッシュできのにねえ。そうなんだあ、やっぱり私の身体は疲れ切っていたのね。こうやって数字で見ると、すごく納得だわ。身体は本当に正直ね」と、客観的な数字によって体調不良の原因の一端を知ることができたという安心感が本人の中に…。

こちらとしても、重苦しい話になりかねない流れを回避することができて(´▽`) 胸を撫で下ろすことができました。

同時に“肉体の疲れ”という情報共有-その真の原因は脳疲労にあることが最新研究によって示されていますが、この場面では脳の話(そっち系の話)はこれ以上したくないわけで、あくまでも肉体次元の疲れという共通認識-によって治療目的が定まり…。

いざ施術(BFI )へ。

そしてBFI 後に再び測定したところ、顕著な回復が!その結果が下の画像です(クリックすると拡大)。

Ans01
個人情報の観点から当然名前は消してありますが、ID、日付、時間等をご確認いただければ同一人物の分析結果であることがお分かりいただけると思います(データ改ざんのないことを証明するため分析結果をありのまま提示)。

捏造でないことをご確認いただいた上で、施術前後の変化が分かりやすいように、以下に項目別の分析データをピックアップします。左が施術前、右が施術後です。

Sdnn00_5YajiSdnn01
SDNN(Standard Deviation of the Normal and Normal Interval)…測定時間内のR-R間隔の標準偏差値。適正範囲は特になく、高いほど健康。20以下の場合、慢性的な疾病状態の可能性が高いとされる。施術前15.2 から施術後は 41.5 に回復

Ansc00Jaji_2Ansc01
上図はHRVにおける周波数領域分析データ(Frequency Domain Parameters)で、LF(ピンク色)は交感神経活動、HF(水色)は副交感神経活動を表す周波数成分。適正範囲はグレーゾーン内。施術後はLFが顕著に回復

Psi00_2Jaji_2Psi01
Physica Stress Index(PSI)は肉体的疲労度を示す指数で、健康人は50~60、疲れが溜まっている人は70を超えることが多い(システム上82が最高点とされる)。山口さんはこの検査器機の設定上の極限値を記録したことになるが、施術後は顕著に回復。Mental Stress IndexはANSバランスを意味しており、両端に近いほど精神的ストレスが強い状態。これもご覧の通りの回復

今回の測定結果を受けて、施術後の山口さんは心身両面に渡って回復したことが覗えます

こうした変化をひとつひとつ丁寧に説明すると、施術直後の自覚症状の変化-頭痛が消えて、頭のもやもや感が取れた-と共に、心の底から安堵したという趣旨の言葉を残し、会計時、晴れ晴れとした笑みを浮かべながら、「やっぱり主人とよく相談してみないとね。仕事を休んでいる今だったら、温泉とかにも行けるわけだし…。そういう場所なら主人も本音を漏らすかもしれない…」と、前向きな発言をされて帰っていかれました。

このようにBFI という脳に働きかける施術(タッチケアのごとき極微の皮膚刺激)が自律神経機能を著しく改善させることは比較試験においても確認されています。その結果が下図です。
Sdnn
実験に関する報告ページはこちら

Hfnorm_2

上図(BFI 研究会の臨床実験)に示すとおり「BFI は生体を副交感神経優位にさせる傾向がある」ことが確認されていますが、今回の症例(山口さん)のように交感神経が極端に落ちている症例に対しては「交感神経を顕著に回復させる結果を得たわけです。

その理由を考えたとき、おそらく山口さんのようにANSバランスが極端に崩れた生体に対しては、そのバランスを回復する方向に働くことで、結果的に交感神経を高めたり、反対のケースでは副交感神経を高めたりするのではと推論され、事実日々の臨床においてそうした現象を確認しております(もちろん症例によってその程度は異なります)。


さて話は変わりますが、痛みの臨床においては、代替報酬という心理学的な要因が重要であることが最新の研究で分かっています。代替報酬のことを指して、私は“目的置換”と呼んでいますが、簡単に言えば、患者さんにとっての治療行為に何らかの楽しみを付加しつつ、やがてその楽しみを通院の第一義的な目的にすり替えてしまうことを言います。

たとえば、私の院のそばにお酒とおつまみにこだわりを持ったお蕎麦屋さんがあるのですが、治療の帰りに必ずその店に寄るという患者さん(遠方より来られるご夫婦)の話では、その店で一杯ひっかけて帰るのが何よりも楽しみだとのこと。

今では「治療のついでにその店に寄るのではなく、お店に来るついでに治療をする」というような目的置換、いい意味での本末転倒的な心理機制が働いており、通院行為そのものに楽しみが伴うという理想的な展開に。これはいろいろな意味でたいへん好ましい流れだと言えます。

ANS測定はこの代替報酬になることがあります。難治性の四十肩で来院されたある患者さん(40代男性)はANSの問題を取り上げたテレビ番組で見て当院を受診され、痛みの改善とANSの改善がリンクすることを自覚しました。

するとANSのTP(トータルパワー)の数値が上がることに喜びと安心感を抱くようになり、体調によって多少の波がありながらも「治療のたびに上昇する数値結果を見るのが楽しみ」という感覚で通院するようになったのです。

結果、難治性の四十肩がいとも簡単に回復しました。以前まで寝ても覚めても気になっていた四十肩への注意は薄れ-患部への意識固着が解消し-、そもそも四十肩のために通院していたことを忘れてしまうほどの精神的変化を来たしたことで脳の代謝バランスが回復したというのが私の見方です。

そして完治した後も体調管理(メンテナンス)としての通院を続けています。代替報酬(ANS測定への目的置換)が功を奏した実例だと言えます。

検査手法の限られる現場(CAM等)ではこのように心身に関わる検査データを患者さんと共有できるという診療体制は本当に意義深いものがあります。

→自律神経と気候の関係&4タイプ

→自律神経&BFI(4タイプ別の実際の数値変化)



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