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« 外傷の痛み(ハードペイン)を再考する | トップページ | 関節反射ショック理論①-AKA理論と肘内障- »

2016/12/20

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と自律神経の関係を考察する-BFIとシャムの比較試験より-

《トップページ》
2015年3月21日の第26回BFI 技術研修会において、自律神経(ANS)測定による比較試験を行いました。

BFI (脳膚相関に則り触覚刺激を介して脳の可塑性を促す技術)の臨床効果と自律神経(ANS)の関係を探る実験。測定器には『パルスアナライザープラスビュー TAS9VIEW(下の画像)⇒販売代理店の解説ページ』を使用。

Tas99v

下は当日の実験会場のベッドや椅子の配置状況です。
Jikken
本来であれば対象を4群に分けて行うRCTをデザインしたかったのですが、当日の被験者数が不足していたため、あえなく断念。そのため t検定等の統計学的処理を行う以前の問題で…、実に拙い臨床試験となってしまいました。

ただ、そもそもの実験動機の解明と“想定外の発見”に繋がったので、個人的には悪くない試験だったと思っています。“そもそもの実験動機”とは、「BFI は患者さんを側臥位にして行う施術だが、その最中眠気を催す方が多く、さらに腹鳴をおこす方も少なくない。このことからBFI は副交感神経を刺激するのではと推測されたが、そもそもベッド上で側臥位になるだけでも、ヒトは副交感神経優位になる可能性があるわけで…。そのあたりのことを確かめたい」というものでした。

被験者は当会会員の14名(♂13名、♀1名)。介入前(実験前)の平常時にANS測定を行い、それをベース値として、4種類の試験直後にそれぞれのANSを測定。ベース値との変化率(%)を算出し、その平均値をグラフ化したものが下図です。

Hfnorm_2
当日の実験内容と結果(上図)は以下のとおりです。
①側臥位(ベッド上で12分間横向きになるだけ)⇒交感神経優位
②シャム(目隠しをして側臥位になっている被験者の身体を一瞬触って手を離し、その後10秒間何もしないを12分間繰り返すだけの偽治療)⇒交感神経優位
③BFI(シャムと同じ状況で三上によるBFI施術を12分間)⇒副交感神経優位
④ミラー療法(右手と左手をあえて不同期に動かして脳を混乱させる状況も含ませる)⇒副交感神経優位

※②と③においては被験者がどちらの施術を受けているのか分からない状況で行われました(ブラインドテスト)。

実験前の私の予想は「側臥位もBFIも両者ともに副交感神経優位に傾くが、BFIのほうがより顕著に…」だったのですが、予想に反して「側臥位→交感神経優位」という驚きの結果が。その理由を考えたとき、実験デザイン上、会場内の環境設定にそもそもの問題があったことに気づかされました。

BFI およびシャムの実験は遮蔽された空間で行われましたが、側臥位の実験に関しては被験者の待機場所を兼ねて椅子が並べられたオープンスペース(待ち時間を有効に活用してもらうため“医療ビッグデータ”のビデオ上映がなされ、なおかつANS測定のブースが真横にある環境)にベッドを設置していたため、周囲に人の動きが絶えずあり、ビデオ音声も耳に入る状況で行われていたのです。このことが被験者を交感神経優位にさせた原因ではないかと…。

つまり側臥位になることで、たとえ身体はリラックスできる体勢であったとしても、脳がリラックスできないと生体は交感神経モードになりやすく、その原因は脳における情報処理が外に向かったこと-外的処理を行ったこと-にあるのでは…。

であるならば、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)-脳の安静時に活動することで知られる広域神経回路」とANSのあいだに何らかの関係性があるかもしれない…。 ヒトの脳は外的処理(外界に注意を向ける情報処理)を行うときDMNの活動は低下し、反対に内的処理(自らを客観視するなど内側に意識を向ける情報処理)を行うときDMNの活動は増加することこちらのページを参照)が報告されています。

であれば、「外的処理⇒DMN低下⇒交感神経優位」、「内的処理⇒DMN増加⇒副交感神経優位」という関係性が成立するのでは?という推考が…。

この推論が正しいと仮定すれば、例えば施術中の患者さんの脳が外的処理を行ってしまうと、すなわち周囲の環境に意識を向けてしまう-例えば複数のベッドが並び置かれた整骨院や病院のリハビリスペースにおいて、自分と直接関わりのない周囲の患者さんや施術者、物療スタッフらの動きや会話等)に注意が向かう-と、DMNの活動が低下すると同時に交感神経優位になりやすい可能性が…。

私はDMNに関して、独自の視点(仮説)を持っています。


脳が消費するエネルギーの内、およそ5%が意識的な活動に使われており、それ以外の大半は無意識的な活動に使われている。ベンジャミン・リベットの実験が明示するとおり、脳の情報処理における主体(メインホール)は無意識下にある。

無意識下にはいまだ人類が知り得ない恐ろしく精巧なスーパーコンピュータが内臓されいる可能性があり、そのCPUやメモリに多少の個人差があったとしても、基本OSは人類皆同じ。老若男女問わず無意識下において膨大な情報が処理され、そして眠っており、それらを表面意識に上げる力がすわなち記憶力だとするならば、自閉症スペクトラムのサヴァン症候群に見られる驚異的な記憶力もアウトプットの“超”能力として説明することができる。記憶を引き出すための何らかの神経回路がもしあるとするならば、その回路の活動亢進として捉えることも…。

つまり無意識格納庫に密閉されてしかるべき情報が一度に大量に意識に上ってきてしまうため、社会生活に必要な情報処理が阻害されていると見なすことができる。 私のような凡人はあらかじめ活動レベルが低い値に初期設定されているおかげで、ギリギリかろうじて社会性が維持されている(多くの人にとって私は奇人変人の類に映るらしいので、“ギリ…”)。

その初期設定に何らかの問題が生じると、例えば統合失調症ではそうした無意識下の情報が秩序なくダダ漏れ状態となって意識に上る(幻聴)?うつ病では無意識下の情報の内ネガティブな感情のみが意識に上ってきてしまう?

このとき、意識と無意識の境界にあって、情報のやり取りを調節している神経回路がすなわちデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)ではないか…。

脳が外的処理を行っているとき、もし無意識下の情報が秩序なく勝手に意識に上ってきてしまうと、たいへん迷惑…。外的処理に集中できなくなってしまう…。そこで意識と無意識間のチャネルを閉じることで、すなわちDMNの活動を低下させることで脳は安心して外界に意識を向けることができる。

反対に、無意識下の情報を意識に上げようとするときは、DMNを開かせる-活動を増加させる-ことで意識に上げる。

アイデアが閃く瞬間、インスピレーションが湧く瞬間というものは表面意識による情報処理によって生み出された瞬間ではなく-思考回路の中から直接練り出されたものではなく-、実は無意識下に眠る情報が意識に上った瞬間であり、ぼんやりと風景を眺めているような脳の安静時-DMNの活動が増加するとき-にこそ、無意識と意識のあいだにある秘密の扉(チャネル)が開くタイミングが潜んでいる


以上の仮説(『三上の十説』の一つ)を踏まえ、「脳の外的処理時に交感神経が、内的処理時に副交感神経が働く」という今回の推考が正しいと仮定するならば、こうした脳における外的モードと内的モードの切り替えやその強弱を含め、いずれのモードになっている時間が長いのかといったことが、生体のANSバランスに影響を与える可能性が出てきます。

簡単に言えば、外的モードになっている時間が長い人ほど交感神経優位になりやすく、反対に内的モードになっている時間が長い人は副交感神経優位になりやすいということが言えるのではないかということです。

この見方が正しいとするならば、詳細な問診とANS測定の結果を踏まえ、該当すると考えられる患者さんと対峙した際に、そうした視点からのアドバイスができるということに…。

ちなみに自己の内面を見つめる以外に、他者の思いを酌み取ったり、共感したりするようなときにもDMNの活動が増加すると言われており、もし内的処理のみならず他者の内部と繋がろうとした時にも副交感神経が働くとするならば、例えば患者さんの気持ちを常に感じようとしている医療者は副交感神経優位になりやすいと言えるかもしれません。

と同時に、内的処理時のみならず他者との共感時においても副交感神経優位になることが、もし本当に証明されたなら、DMNとANSの関係に更なる整合性が補完されることになります。

また蛇足になりますが、私の主観として、ヒーラー体質(本人の自覚の有無とは無関係に、いつも周囲の誰かを癒してしまう力)を持っている患者さんは副交感神経優位になりやすいという印象を持っています。 さて、ここでもう一度先の実験結果に戻ります。

Hfnorm_2


上記のような結果になった理由を考えるとき、これまでの推考に照らし合わせると、側臥位とシャムでは被験者の脳は外的処理を、BFIとミラー療法では内的処理を行っていた可能性があるわけですが、側臥位の理由については既に述べたとおりで、BFIについてはこちらのページ(無意識下情報処理が痛みや関節拘縮を改善させり理由)で解説しております。シャムとミラー療法については別の機会に述べたいと思います。


こちらのページ(実際の症例)で紹介している通りBFI はSDNNを顕著に改善させる-自律神経活動を高める-ことが確認されていますが、研究会メンバーを対象にした先の実験においても同様の現象が追認されました。以下がそのデータです。

Sdnn
これまでの私見と上記結果を踏まえ、HRV(心拍変動解析)によるANS測定から推測されたBFIの臨床特性を整理すると以下の通りとなります。

◆ANSバランスが顕著に崩れている生体に対しては、交感神経優位か副交感神経優位かに関わらず、バランスそのものを回復させる方向に働く。⇒実際の症例(ANS測定結果)

◆ANSバランスの顕著な乱れがない生体に対しては、副交感神経優位に働く

◆ANSバランスの如何を問わず、自律神経活動を高める

◆稀に施術後にANSの数値が悪化するケースがあるが、その理由は不明


さらにDMNの知見と組み合わせることで、脳における情報処理が外的モードのとき交感神経優位、内的モードのとき副交感神経優位になりやすいのではないかという視点について今回ご紹介させていただきました。


今後はdlpFCとDMNの関係、マインドフルネスとDMNの関係、脳疲労とDMNの関係、脳膚相関とDMNの関係、そしてDMNと私論「意識重心仮説」等の情報を融合させることで、BFIのごとき微触覚アプローチ(究極のタッチケア)の脳内メカニズムがよりいっそう明確になっていくのではと推察しています。

 

自律神経と気候の関係&4タイプ

→自律神経&BFI(4タイプ別の実際の数値変化)



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