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2016/12/21

関節反射ショック理論①-AKA理論と肘内障-

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難治性四十肩における「施術直後に可動域が回復したにも関わらず自発痛不変」の症例、変形性膝関節症における「和式トイレでしゃがむことができないという主訴(所見)が完全に解消された後も安静時痛ほぼ不変(VAS10⇒9)」
の症例、ごく軽度の変形性股関節症における「治療前後の歩行ビデオに顕著な改善が見られても自覚症状不変」の症例等々…。

こうした症例の数々に対しては、当会のごとき診断哲学-脳原性の痛みすなわちソフトペイン(ソフト論)という視点-があってはじめて合理的な解釈が可能となる。



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昨年、当会の研修会に初めて参加された方から以下のようなご質問をいただきました。

痛みの臨床においてその多くはソフトペインではないかという三上先生の視点に賛同します。技術を極めるためにあえて自費によるAKAのみを長年行ってきたという先生の治療家としての姿勢にも共感いたします。

そのうえでAKAが説明するJD(関節機能障害)や無菌性の関節炎に伴うpainもその実態はソフトペインに過ぎないかもしれないというお話、AKAやANTという技術の本質について脳科学の視点では肉体(関節)を入り口にして脳に働きかけるテクニックと見なすことができるという解釈…。

そしてそれらを裏付ける症例の数々にはたいへん説得力があり、私自身の臨床経験に照らし合わせてみても、先生のおっしゃることにほとんど違和感はございません。

ただ一点だけお伺いしたいことがあります。ソフトペインにJDが合併するとあたかも「JD=痛み」のように見えてしまうというご説明は理解できるのですが、同じJDでも肘内障の痛みに関してはやはりハードペインだと思うのですが、この点について先生のご見解をお聞かせください』


以下に私からの返答を記しますが、あくまでも個人的な視点に過ぎないことをご承知おきください。ついでに、さだまさしさんの名言「なお意見には個人差があります」も付言させていただきます(記憶力や運動能力に個人差があるように、人の“意見”にも…)。

AKAではJDという病態を分かりやすく説明する際、肘内障を引用することがありますが、結論から申し上げますと、肘内障の痛みは確かにハードペインだと思われますが、AKAが説明するところのJDとはその病態が少し違うのではと考えています。

AKAの概念におけるJDは関節面の滑りの障害を指しており、これを建築の免震技術に譬えると、免震装置の故障だと言い換えることができます。

建築の免震デバイスにはいろいろなタイプがあり、その中には下のようなものがあります。たいへん興味深いことに関節運動学における名称と全く同じです。

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JDはいざ地震が発生したときに免震デバイスが機能しない(動かない)-すべらない、転がらない-状態ですので、AKA曰く「JDに伴う筋スパズムが痛みを誘発する」というのであれば、その症状は基本的に運動時痛のみ-地震が発生しない限り問題は顕現しない-という理屈になります。

しかしこの考えでは安静時の痛みの全てを合理的に説明することができないため、「無菌性の関節炎」という概念が加えられました。関節受容器TypeⅣによるハードペインという考えです。さらに炎症の存在下で目を覚ますサイレント受容器に着目し、これにより運動時痛と安静時痛の両方を説明することが可能となりました。


しかし、
私はかつてAKAの臨床において「JDが回復しているにも関わらず痛みが不変」、反対に「JDは全く回復していないのに痛みだけ消失」という事例や「筋スパズムが消失しているのに痛みが不変」、反対に「筋スパズムが全くないのに痛みが強い」といった事例に少なからず遭遇したのを契機に「JD➡筋スパズム➡痛み」というAKA理論に疑問を抱くようになりました。


もっとも当時の私はこれをすぐさま事実として受け止めることができず、「まだ己の技術が未熟だから、副運動を触知できていないからだ」と自分に言い聞かせ、先のような事例に目を伏せていたのです。

AKAにのめり込んでいた当時の私は痛みの何たるかを考えることよりも「技術を極める」ことが優先順位の上にあって…、つまり「患者の問題を考える」ことよりも自らの技術向上が優先される精神状態になっていたようです。

やがてCRPS(RSD)の臨床、シャム(触る振りをして実際には触らない偽治療)による痛みの改善や悪化、心の問題から目を逸らすために無意識に痛みを作り出していることに気づけない、否…、気づきたくない患者の悲哀等々における臨床経験値を総動員した結果、最終的に私の中で
JDと痛みは相関関係であって、決して因果関係ではないという結論に達したのです(相関関係と因果関係の違いを知ることは臨床家にとって重要なプロセス)。

また痛みとメンタルの関係に着目すると「関節炎特殊型の症例にはメンタルにダメージを及ぼし得る心身環境因子が必ずと言っていいほど先行している」という事実に気づきました。

これに関しては当然ながらの反論ー痛みの影響が結果的にメンタル面に及ぶのであって、メンタルの問題が痛みを引き起こすわけではない-があるわけですが、患者の内面に深く切り込んで1時間以上ものカウンセリングを日常的に行うという診療スタイルを20年以上も続けてきた私の眼には「痛みの発生と心身環境因子の問題の時系列は、痛みが先ではなく、間違いなく心身環境因子における“事件”が“先”にある…」と映ります。

ハード論者の先生方からは「脳は関係ない。いいかげん考え方を改めなさい」というご批判、お叱りを常々頂戴しておりますが、心身環境因子に関わる問診やカウンセリングを究めてきた私の眼には「関係ない」という景色がどうしても見えませんで…、本当にすみません。

私の技術遍歴は「AKAからANTを介してBFI に…」であるため、AKAの視点では関節炎特殊型としか考えられなかったような重症例が、濃厚なカウンセリングあるいはBFIによって痛みが消失するという事例に数多く直面してきたため、痛みの問題はほとんど脳の次元で説明できるのではと…。

そこで最新の脳科学、認知神経科学に目を向けたところ、本当に色々なことが分かってきまして…。痛みを追究するという姿勢においてそれらの情報を追っていくと、実際の臨床と繋がることが非常に多く…。その詳細についてはこれまで当会の研修会で何度も披歴すると同時に当ブログにUPしてまいりました。

以上の理由により(エビデンスとは程遠い個人的な主観ですので“理由”と言うのもおこがましいですが)、JDに付随して現れる痛みの本態はソフトペインなのでは…、というのが私個人の見解です。



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《交絡因子とは?》
物事の因果関係を証明する際の障壁すなわち現象の重複関係を指した言葉。可能性のある複数の因子が同期し得ると因果関係の特定がむつかしいという論理的マスキングが交絡因子である。



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先述した建築の免震技術に譬えると、JDはあくまでも免震装置の故障であって建物自体は傾いていない状態ですが、その一方で、小児の肘内障にあっては建物自体が傾いてしまって隣の建造物に接触して止まっている状態…、つまり関節内で骨運動軸が完全に偏位してロックしているものが肘内障であり、AKAがJDを説明する際に引用する肘内障の説明は適切ではないと、私は考えています。

JDという概念の中に「関節内の骨頭が周囲の靭帯等に絡まるような状況」はおそらく包含されていないと思われますが、肘内障では橈骨頭が輪状靭帯に絡まってロックされていると説明されるとおり、建物に譬えれば、家屋が傾いてしまって隣りの家にもたれかかっている状態です。


他方、JDの場合は「家屋は傾いておらず、地震発生時に免震装置が動かないだけ」と表現することができます。

肘内障で発生する痛みは関節包内における組織間衝突(おそらく骨頭と靭帯の衝突)を感知した侵害受容器(おそらくTypeⅣ)がもたらすハードペインだと考えられます。

隣接家屋に完全にもたれかかって接触している状態(本来接触してはならない物同士が接触している状況)が肘内障であり、JDにおいては隣接家屋に接触しているわけではないので、侵害受容器が反応することはありません。つまりハードペインは発生し得ないのです。

JDの結果顕現する筋スパズムが痛みを惹起するというのであれば、それは筋スパズム由来のハードペインという理屈になりますが、臨床経験値の高い医療者であれば「筋スパズムの変化と痛みの変化は必ずしも一致しない」という見解に異論はないはず。



では、小児の肘内障はなぜ発生するのか?なぜ家屋は傾いてしまったのか?すなわち橈骨頭が輪状靭帯に絡まってしまうという現象の詳細なメカニズムは何なのか?

すべての謎を解くカギは関節反射の中にあり、そしてその答えは「関節反射ショック」だというのが私の考えです。従来の構造原因説(橈骨頭の未発達)に私論を補完することで肘内障の真相がこれまで以上にはっきりと見えてきます。



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そして運動器の臨床で遭遇する様々なハードペイン、とくに時間差を置いて現れる「遅発性ハードペイン(その代表例が交通外傷におけるむち打ち損傷)」に対しても合理的な解釈が可能になります


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このあと関節反射について詳しく解説し、その上で関節反射ショックの病態を詳らかにしたいと思います。

➡関節反射ショック理論②-関節反射とは何か?-





【謹告】
当会の姿勢として「AKA⁻博田法の効果を否定していない」ことにご留意いただければと思います。AKAに限らず、筋膜リリースであれ、その他のハード論的介入であれ、それらすべての効果を認めています。認めた上でその解釈に対する異論を展開させていただいております。

当会のごとき視点を究めることで「未来の医学書にゆるぎない統一概念を記載することができる」という絶対的確信を持っているからです。

とは言え、市井の人々の多くがハード論(テレビやマスコミで紹介される療法)に安心感を抱く今という世の中にあっては、分かりやすいハード論を掲げて治療を行ったほうが無難だと言えます。

ただ、医療者のあいだで「未来の教科書を意識する視点」をこれまで以上に共有することができれば、疼痛概念の混沌に終止符を打つ時期が早まるのではと…。





➡関節反射ショック理論②-関節反射とは何か?-




➡関節反射ショック理論③-関節トーヌスの瞬間消失-





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