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« CRPS (RSD) とは?-基礎知識編- | トップページ | H29年7月のアップデートおよび比較試験の結果報告 »

2017/07/29

痛みの原因論の二極化(肉体?or 脳?)について一番分かりやすい説明-ソフト論、ハード論とは何か?-

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昨春、私用のパソコンから突然「ジー、ガゴゴゴ-」といった耳障りな音が…。なんじゃ?この音!それまで聞いたことのない異様な音でしたので、おそらくハードウェア(機械部品)の問題だろうと思い、ネットで探し当てたハード専門の修理屋さんにパソコンを送ったところ、冷却ファンの故障であることが判明。

で、そのハード屋さんに冷却ファンを交換してもらって無事解決。

ただ、その際「パソコン内のHDD(ハードディスク)の使用時間が23,000時間を超えていて、いつ寿命が来てもおかしくない状態なんで、新品に交換したほうがいいですよ」という助言をいただきました。

パソコン素人の私は恥ずかしながらこのときはじめて「HDDに寿命がある」ことを知ったのですが、仕事に忙殺されて手を打たずにそのまま…。そうこうしているうちに、たびたび画面に現れる「Windows10への無償アップグレード」の誘い文句に乗ってクリックしたところ、めでたく私のパソコンOSは“7”から“10”に生まれ変わりました。

ところがその数週間後、突然それはやってきたのです。まさかまさかの暗黒画面…、フリーズ! (;一_一)  「ウォー!マジか!」

何をやってもまったく反応しなくなったパソコンを前にして、「HDDの寿命がついに来ちまったか?!」と愕然となり…、「あっ、そういえば最近バックアップやってねえ!ヤバイ!ううう、うそだろ!頼む!動いてくれえええ!」と叫んでみたところで後の祭り…、過ぎたるは及ばざるがごとし。

くだんのハード屋さんにメールで状況を伝えたところ、そもそも私のパソコンはWindows7用のマシンとして作られており、メーカー側もWindows10に変更した場合の動作保証はしていないとのこと。フリーズの原因はOSアップグレードによるソフトの問題、あるいは前回指摘したHDDの寿命、あるいはその両方が合併している可能性、その3つが考えられるとの返事。

で、そのハード屋さんにパソコンを再び送って調べてもらったところ、HDDは無傷であり、つまり寿命を迎えていないことが分かり、フリーズの原因はやはりソフトの問題(Windows10へのアップグレード)にあることが判明。

最終的にOSを元のWindows7に戻すことで一件落着となりました(ファイルもほぼ復元することができました)。


今回の一連の出来事は痛みの新分類(ソフトペイン、ハードペイン、ハイブリッドペイン)を理解するうえで、非常に分かりやすいと思います。

最初に発生した“異音”はハードの故障を知らせるサインであり、人間で言えばハードペイン。そのあとに起こった画面のフリーズはソフトの問題に因るもので、人間であればソフトペイン。仮にハードとソフトの両方が合併していたならば、人間ではハイブリッドペインということになります。

人間の痛みもハードの問題で起きているのなら、1回目のように部品を修理あるいは交換すれば-手術すれば-解決します。

他方それがソフトの問題から来ているのであれば、2回目のようにソフトの修復(システムの回復)-脳の情報処理システムの回復-を図ることで解決します。


BFI研究会の臨床データにおいて、運動器プライマリケアにおいて最も多い痛みはソフトペインであるという可能性が示されています。

同時に慢性疼痛に対して行われるあらゆる介入(世界中に現存する数多の治療行為)は脳にアクセスするための入口、手段の違いに過ぎず、それぞれがターゲットに据える感覚受容器を介して脳のシステムに介入した結果がソフトペインの改善に繋がっており、“慢性ハードペイン”というものは僅少に過ぎないという視点が…。

さらに“慢性ハードペインありき”で確立された形態学上の診断と痛みの原因診断は明確に区別すべきではないかという視点も浮上しています。

パソコン業界におけるエンジニアは大きく2つに分かれます。ハードウェア・エンジニアとソフトウェア・エンジニアで、それぞれハード屋、ソフト屋と呼ばれたりします。

前者は文字通りハードウェア(電子回路やメカ外装)の設計、組み立て、修理などを行う専門家であり、後者はコンピュータ言語でプログラミングする-ソフトを作成する-専門家です。

私は前述したとおりパソコン門外漢ですので業界事情に精通しているわけではありませんが、ハード屋とソフト屋はそれぞれの役割が明確に分かれており、パソコンに発生した症状に則して適切な対応が取られていると思われます。

例えばHDDに問題が発生した場合、その原因が物理障害(機械的な故障)なのか、それとも論理障害(ソフトのエラー)なのかを見極めた上で、それぞれの専門家が対処しており、ハード屋が論理障害の対策に取り組んだり、ソフト屋が物理障害の修理を専業にするというミスマッチは起こり得ないはず…。

私のパソコン1回目の異常(冷却ファンの劣化)はハード屋さんに直していただいたわけですが、2回目の異常(フリーズ)はソフトの問題それも「論理障害の軽症例」でしたので、メーカーの窓口に問い合わせながら自らOSを初期化することで解決。


ところが、これを医療に置き換えて考えた際、そこには大いなるミスマッチが…。

外科系の医師や柔整師はハード屋であり、一部の診療内科医やニューロリハを行う医療者はソフト屋だと言えますが、今の医療界にある問題として実際はソフトの異常に過ぎない案件をハード屋が診ているという点が挙げられます。

ハードペインに対してハード屋が診るのは当然の流れですが、ソフトペインに対してもハード屋が診るというミスマッチ、それも「多くの痛み=ハードペイン」という強固なバイアスを抱えた医療者による“画像依存型ごみ箱診断”が長きにわたって続いています。

パソコンに譬えれば、ソフトの異常で起きているフリーズに対して、HDDを交換したり、冷却ファンを交換したりするようなことが、医療界では当たり前のごとく続いているということです。

ハード屋の論理は線形科学ですから常に「A→B」ならば「B→A」という1対1の整合性が担保されますが、ソフト屋ではそれが担保されません。なぜ担保されないのか?その理由について前述した私のパソコン事例から説明させていただきます。

ハード論の場合、“非線形科学”すなわち複雑系におけるカオスを考える必要はまったくありませんので、理屈の筋道は単純明快です。「正常な冷却ファン➡劣化」ならば「劣化➡正常な冷却ファン」ですから、とても分かりやすい。

その一方でソフトの場合はどうでしょう?おそらくパソコンをあまり使わない方は「Windows7➡Windows10」ならば「Windows10➡Windows7」だったのだから、これも線形科学ではないかと思われるかもしれません。しかしこの場合の方法論として「Windows7➡Windows10」ならば「Windows10➡Windows」ということが有り得てしまうのです。

どういうことかと言うと、私のマシンとWindows10との相性は確かに悪かったのでしょうけれど、もしかするとWindows8とは相性が良かったかもしれない。その場合、もし元通りの“7”ではなく、“8”に変えたとしても私のパソコンは復旧できた可能性があるのです。あるいは“8.1”でも可能だったかもしれません。

そもそもマシンとの互換性として、メーカーが言っているのは「Windows10に変えたら100%動かなくなりますよ」と言っているわけではなく、「動かなくなる恐れがありますよ」と言っているだけで、現にWindows10にアップグレードした同機種の全てにフリーズが起きているわけではありません。

個別のマシンとの何らかの互換性(おそらくHDDの空き容量やソフトの中身など)において色々な要素が複雑に絡み合うことで、結果的にフリーズするマシンとしないマシンに分かれてくるということです。

こうなってくると、どうでしょう?1対1の方法論という理屈は当てはまらなくなります。これこそがシステムとしてのソフトウェアのむつかしさなのです。

パソコンというものはハードの領域に関しては線形科学ですが、ソフトの領域は実は非線形科学すなわち複雑系と言っても過言ではないと、私は思っています。

事実人間の脳を模したニューラルネットワークによるディープラーニングがソフトの究極とも言える存在-人工知能(AI)-を作り上げています。ちなみにAIが備える予測能力(予知能力と言ってもいい)は米国で現実のものとなっており、もはや人間には「AIがいかにしてそれを予測したのか分からないレベル」になっているそうです。未来のAIは人間の脳を超えるとまで言われています(2045年問題)。

人工知能はさておき、同じソフトでも一番身近な存在がアプリです。スマホ世代の方には“ソフト”ではなく“アプリ”と表現したほうが分かりやすいかもしれません。アプリとはアプリケーションソフトの略称で、要はソフトウェアの一種です。広義ではソフトもアプリもいっしょだと考えていただいてけっこうです。

文章を書くソフト(Word)や表計算のソフト(Excel)、ゲームソフトや映像編集ソフト、スマホで使う多種多様なアプリ、こうしたソフトは様々なコンピュータ言語で作られる超複雑なプログラムであるが故、たいていは何らかのバグを抱えています。ソフト同士の相性やOSとの相性といった次元も含め、ソフト自体に潜在しているバグは放置できない問題です。

そのためソフトを提供する側はそのバクを取り除いたり、機能を向上させたるための修正プログラムをユーザーに提供します。

こうした機能向上やバグ修正のプログラムを端末にインストールすること(ソフトの一部を書き換える更新作業)がまさしくアップデートと呼ばれているものですが、実は人間の脳においても同様のことが行われています。

脳内には無数のアプリが入っていて、たとえば視覚アプリ、聴覚アプリ、味覚アプリ、触覚アプリ、運動アプリ、血圧調整アプリ、体温調節アプリ等々、数え上げたら切りがありません。

これらのアプリには多かれ少なかれバグがあり、実は脳は五感の刺激を介して自らアップデートする営為を日々続けています。脳疲労の解消においても、認知症の予防や治療においても五感の刺激が大事だと言われる所以です。

当会がソフトペインを改善させるべく脳にアクセスするための技術BFIは、五感の中でもとくに触覚を重視しています。皮膚刺激を介して脳内の痛み回路(これもバグのひとつです)を別の形に書き換えるすなわち「痛みを出力させるプログラムを書き換えること」を目的としています。

したがってBFIという技術はソフト屋が使うものであって、ハード屋が使う技術ではありません。

とは言え、当会の前身(関節運動学研究会)はコメディカル系ハード屋(柔整師)の集まりでした。

発足当初はAKA⁻博田法とANTの技術習得を目指して、AKA理論の学習はもとより、開発者の博田先生の身体感覚を忠実に再現すべく古武術などの身体操作も積極的に採り入れ、高度な体幹制御と手指脱力をいかにして為し得るかを追求していました。

その結果、博田先生は100年に1人と思しき天才的な身体感覚の持ち主であり、博田先生の技術を100%完璧に再現できる医療者はいない(あえて断言します)と同時に、博田先生の特殊身体性能が奏でるハーモニーすなわち超絶手技が脳へ及ぼす効果-当会が掲げる“無意識下情報処理”を促す効果-が異次元なほどに高いという結論に達したのです。

そして痛みの本質を探究することよりも「技術を究めることが優先される精神状態に陥りやすい」という弊害が、AKAをはじめとする徒手医学の世界に潜んでいることに気づかされました。

そうして紆余曲折を経て後、情報の入出力を統括する中枢システムすなわち“脳内アプリ”を学ぶことの重要性に帰結したのです。人間の感情を制御するソフト(感情アプリ)には大なり小なりバグがつきものであり、個人差はもとより感情が生理現象に与える影響は計り知れないものがあります。

ところが整形外科医であれ柔整師であれ、成書から学ぶ内容はハード論だけであり、ソフト論を学ぶ仕組みのない医学体制にも気づかされました。

そうした意味においても「ソフト論を知るハード屋」あるいは「ハイブリッド屋」の育成が重要ではないかと考えます。

当会会員の多くはハードの治療を実践しつつ、成書に記載されていないソフトペインの実態について臨床研究を進めています。つまり中心メンバーの多くがハイブリッド屋なのです。

おそらく現時点において、ソフトとハードの両面からアプローチすることのできる数少ない研究会の一つだと思われます。ソフトの知識しか持たないというわけではなく、両方の知識と経験を有して痛みの本質を捉えているのです。

ハードペインの最たるものは骨折や脱臼などの新鮮外傷によるものですが、当会には整形での勤務経験を持つ者が多く、リアルタイムの画像所見と共にハード修復に携わってきたキャリアがあります。そのうえでソフト屋としての能力を獲得していったという来歴があり、ソフトとハード両面にわたる深い造詣があります。

大事なことは「技術ありきで介入すること」ではなく、「自らの介入が最適な仕組み(システム)となっているかどうかを省察し続けること」です。刺激の性質や刺激をインプットする場所(インターフェース)といった次元に関わる仕組みへの考察を続けていくことが大切なのです。これがソフト屋の本質だと言えます。


今後も脳科学、認知神経科学等の発展はとどまることを知らず、次々に新しいことが分かってくるでしょう。そのとき痛みの臨床に携わるハード論者にはどんな選択肢が?痛みのソフト論を無視することなど現実的に不可能な未来において、どんなスタンスを模索するのか?

もしあなたがソフト屋あるいはハイブリッド屋に転身することを厭わないのであれば、当会の発信する情報は決して有害無益ではないと思います…。





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