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2018/11/30

「子供は外因性、大人は内因性」という視点

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【小学生の子供を持つ母親が頭痛、肩こり、抑うつの主訴で来院。話を聴くと、子供の不登校に悩まされており、発症に関わる時間系列において、本人の体調不良と子供の問題が同期していることが判明】

初診時に相応の時間を確保できる現場であれば、最初の診察でこの程度の情報収集は容易であろうと思われます。よほどプライベートな話題を避けたがる患者さんでなければ、これくらいの問診傾聴はたやすいでしょう。

しかし、初診時における分析結果-子供の不登校に悩む心理的ストレスが原因-に胡坐をかいて探査の歩みを止めてしまうと、真の原因に辿り着けない危険性があることを、私たち医療者は認識すべきです。“この続き”が待っていることが往々にしてあるからです。


【その翌日、母親が「子供のほうも診て欲しい」と、渦中の我が子を連れ立って来院。「腹痛と腰痛が酷くて学校に行けない」という小学5年の女の子を診察した結果、発達障害あらため発達個性の境界例タイプー精神科でWAIS⁻Ⅲ等の検査を受けたなら、おそらくグレー判定になるであろうレベルーであることが推察された】

母親にその旨を伝えて、子供が訴えている腹痛や腰痛は心因性であり(既に内科や整形を受診して肉体次元の問題でないことが確認済み)、物事に対する偏った思考や思い込みの激しさ()が本人を苦しめていると説明。



(※)…発達個性に関わる臨床経験が豊富で、かつ個別の事案に対して内面への深い介入を厭わないカウンセリング-もちろん相手によってその是非や深度およびタイミングを見極める必要がある-を行っている医療者であれば、こうした個別の傾向を見抜くことは容易であり、特別な能力が必要というわけではない(発達個性には様々な次元があり、いくつかのタイプに分かれる)。


さらに本人にとって最大のストレッサーが学校内にあるのか、家庭内にあるのか、その両方なのか、あるいはそれ以外の場所なのか、といった次元を探るべく、その後も母親と子供双方への問診傾聴を続けたところ、学校内のストレッサーをはじめ様々な要因が浮上していくなか、最終的に最大最強のストレッサーは母親自身であったことが判明。

その際、涙ながらに語った母親の独白は以下のとおり。



「私は子供のころから競争心の塊。他人に負けるのが大嫌いで、常に上を目指して突き進んできた。トップの世界を知ることで人生が変わることも学んだ。だから、この子にも、私と同じように、いいえ、それ以上に高みの世界を味わって欲しい。それなのに、この子は競争心に乏しくて…。

やればできるのに…。そんな娘を毎日見ていると、歯がゆくて、悔しくて、どうしてもっと頑張れないのかと…。その挙句、今では学校にすら行けない状態に…、もう本当にどうしていいか分からない」(※)



(※)…この告白に至るまでの道のりはたいへん険しいものがあり、粘り強い問診傾聴の果てにようやく辿り着いた結実であり、結果的に母親自身の内面に潜む葛藤を発露させる“感情解放”に成功した事例と言える。


母親はスマップの名曲「世界に一つだけの花」の真逆をいく思考の持ち主だったのです。我が子の特性を知り、その長所を伸ばしてあげるというスタンスは皆無で、自分が思い描く理想像を勝手に作り上げて、そのギャップに苦しんでいるわけです。


さて、母親に対する当初の診立てはどうだったでしょうか?初診時に分かった因果関係は「子供の不登校→心理的負担→体調不良」という図式でした。この場合、母親の症状は外因性ということになります。

子供の不登校という外からやってきた問題が母親の体調を崩したと考えれば、外因性という認識になるでしょう。学校内に分かりやすいストレッサーが確認された時点で、「子供が学校生活にストレスを感じて不登校に…。そんな子供を心配して母親も体調不良に…」という分かりやすい文脈に得心して、原因探査の幕を下ろしてしまう現場がほとんどではないでしょうか…。


近年、脚光を浴びている認知行動療法の現場であれば、そんな次元の終幕はあり得ない…?
それとも…?


もしこの母親が認知行動療法を受けていたら、どうなっていたでしょうか。


相当に入念かつ周到な問診が事前に行われたとしても、上記のごとき嗚咽しながらの告白-自身の内実をさらけ出すような極めて深い次元の披瀝-を引き出すことは、おそらく容易ではないと、私は想像します。

中には“引き出せた現場”もあったかもしれませんが、そのような現場が多くを占めるとは、私には思えません。そうした母親の実情すなわち親子関係の水面下にある複雑な事情が分からないまま、認知行動療法が進められていく可能性のほうが高いでしょう…。

その場合、おそらく通常の流れと同じように、まず痛みの原因(肉体次元の問題ではなく、こころの問題である)を正しく認知してもらい、それまでの間違った行動パターンを修正していきましょう、となります。

外因性という認識が全ての出発点になっている以上、子供の不登校という「外の世界」に対して、「どのような対応が正解なのか」といった視点がメインとなる。つまり「外の問題に対してどう対処すべきか」が焦点となってしまう…。

ですが、前述したとおり、母親の痛みの原因は外因性ではなく、間違いなく内因性なわけです。自分自身の考え方に問題の根っこがあって、子供の不登校は自身が招いた結果に過ぎません。昔「鏡の法則」という本がベストセラーになったことがありますが、まさしくその典型…。




物事の因果関係を見極める際、内因性-自分の中に原因がある-か、それとも外因性-自分の外に原因がある-かという視点はとても重要です。

なかでも痛みの臨床における問診傾聴や、当会が実践している光の解釈カウンセリングにあっては、非常に大切な視点となります。

最終的に患者さん自身が自分と深く向き合うことで救いがもたらされたケースと、向き合うことなく皮相的な救いで終わったケースでは、その後の人生の歩みが決定的に違ってくるからです。

ヒトのソフトペインを見つめるということは、人の生きざまに思いを馳せて、人に寄り添うことと同義だと、私は考えています。痛みの真実はそうした姿勢がなければ絶対に解明できないという確信と信念が私にはあるからです。

他方、「そんなことは僧侶や牧師に任せておけばいい、医療者の仕事じゃない」と考える方は、トレンディな脳研究の知見のみを追いかけるか、または肉体だけを考えるハード論の世界で存分に辣腕を揮っていただければと存じます。

ただ、もし医療者たる者ソフトペインの世界も知っておく必要がある、あるいはその世界を覗いてみたいという方がおられましたら、当会の歩みに関心を寄せていただければと思います。




最後に、痛みの臨床に長いあいだ携わってきた私個人の印象として、子供の症状は外因性、大人の症状は内因性が多いと感じております。今回取り上げた親子の症例がまさしくそうであったように。



…なお、意見には個人差があります。何卒ご容赦ください。



その後、母親は当方との対話(光の解釈カウンセリング)を続けるなかで、自身の問題と正面から向き合い、そして娘の発達個性の傾向も受け入れ、人生の新たな価値観を持つに至りました。親子そろって症状はほぼ消失しています。




「ソフトペインという用語は聞いたことがない」という方は、一般講演会『痛みとは何か?-その深淵なる世界-』の概要報告をご覧ください。



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