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椎間板ヘルニア-③末梢神経の圧迫≠痛み-

2011/10/27

③末梢神経の圧迫≠痛み

《トップページ》

日本では神経という言葉はいろいろな使われ方をされます。よくいわれるのが「神経痛」という言葉です。これは末梢神経が傷んでいると考えられているもので、坐骨神経痛や三叉神経痛などがその代表例です。

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一方で「あの人は神経が細い」とか、「神経質だ」という言い方があります。これは人の気質に関する表現ですので、中枢神経である脳に対するものです。

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脳と脊髄は中枢神経に分類されます。中枢神経はひとたび損傷を受けると回復しにくいため(最新の知見では回復の可能性が示唆されています)、脳は頭蓋骨に、脊髄は背骨に守られてあつく保護されています。
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骨の防御壁に囲まれている中枢神経に対して、末梢神経のほうはむきだしのままからだのいたるところに伸びています。そのため、いろいろなきっかけで周囲からの影響を受けやすいとされ、神経痛という概念が存在しているのです。

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ところが、末梢神経は一般に考えられているほど弱い構造物ではありません。一本一本の神経線維は何重にも束になっており、それを取り囲むようにして三重の膜によって保護されています

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P2

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一般に神経は触ると痛いというイメージがありますが、末梢神経の多くは頑丈な膜―三層構造―に覆われており、むきだしの神経が痛むというイメージは誤ったものです。

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末梢神経の断面はちょうどレンコンのそれに似ています。レンコンの穴の部分に神経の束が詰まっていると想像すると分かりやすいでしょう。この構造は電器コードにも酷似しており、電気(信号)を伝えるという役割からしても、ひじょうに似ているものです。

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末梢神経は人間版の電器コードといえるでしょう。

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それではこの電器コードが圧迫されるとどのような現象が起きるのでしょうか?椎間板ヘルニアについては後ほど詳述するとして、ここではよりシンプルな例を取り上げてみたいと思います。

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カップルが添い寝をした際、男性が女性のことを腕枕して寝込むことがあります。このとき、男性の上腕部に女性の頭部の重みが長時間加わった結果、神経が圧迫されて麻痺をおこすことがあります。整形外科ではハネムーン麻痺とよんでいます。

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一般にこの麻痺をおこした男性は、朝方目覚めたときに、自分の手首を持ち上げることができず、手先の感覚がないことに驚いて病院を受診します。

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多くは一過性の麻痺で、やがて回復するものです。この際、男性はおもだるさを訴えることはあっても、痛みを訴えることはありません。カウザルギーという特殊な病態が発生しない限り、痛みはおきないのです(カウザルギーについてはこちら)。

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だいぶ前の話ですが、私が整形外科に勤めていたとき、あるプロ野球選手が「手が動かない」と言って、受診されました。当時、彼は某球団の投手として活躍していましたが、その症状は典型的なハネムーン麻痺でした。

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そこで、私は失礼に当たらないよう慎重に言葉を選び、昨夜のことをたずねると、実はそういう状況だったと認めました。本人もそれが原因ではないかと、うすうすは気づいていたようです。

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この野球選手の場合も、やはり痛みはありませんでした。何を隠そう私自身も若かりし頃、旅先のホテルで同じような体験をしたことがあります。もちろん痛みはなく、上着のボタンがはめられなくて困ったということを今でもはっきりと覚えています(独身時代の話です)。

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また骨折の治療でギプス固定を行う際、皮膚直下の神経に対しては綿やスポンジなどのクッションを入れて神経を保護する必要があるのですが、これがきちんとできていないと麻痺をおこすことがあります。この場合も痛みはありません。もし痛みがあれば麻痺をおこす前に対処しているわけで、痛みがないからこそ麻痺になるのです。

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そもそも末梢神経は脳からの指令を筋肉に伝える、あるいは痛みを含めた種々の感覚を脊髄まで送り届ける伝達器官に過ぎません。まさしくその役割は電器コードなのです。痛みを感じるセンサーは末梢神経の先端部分にしかありません。

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Cord

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電器コードでは信号の入力ができるのは先端のプラグだけです。理屈はこれとまったく同じです。電器コードを触るたびに感電したのでは、たまったものではありませんね。末梢神経もその意味ではまったく同じ構造物だということです。

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このことは末梢神経に限った話ではありません。神経の集合体である脳ですら、メスで切ったり引っ掻いたりしても痛みは感じません。脳自体に痛みを感じるセンサーがないからです。末梢神経のコード本体にも、やはり痛みを感じるセンサーはないということです。

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ですから

..........................末梢神経は単純な圧迫では痛みをおこさない!

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..........................強い圧迫が長時間にわたると麻痺になる。

       しかしそういう場合においてさえも痛みをおこさない!

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このことを衷心よりご理解いただきたいと思います。

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現代人に沁みついている「神経は触ると痛い」という間違ったイメージをどうか捨て去って欲しいのです。

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考えてもみてください。末梢神経はからだの中を縦横無尽に走って至るところに伸びています。もちろん関節の動きに合わせていっしょに曲がったり伸びたりもしているわけです。そういう部位では頻繁に生理的な圧迫を受けています。

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そのような組織がちょっとした外力にも影響を受けるような“か弱い構造物”であるはずがないではありませんか。もし簡単に感電してしまうようなそんなヤワな組織だったら、人間はしょっちゅう痛みやしびれに襲われている…、そんなことはあり得ないでしょう。

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足の裏の皮膚のすぐ下を走っている神経-固有底側指神経・総底側指神経・外側足底神経・内側足底神経-たちは、日々の生活の中で、いったいどれほどの衝撃を受けているか想像してみてください。

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彼らは人間の全体重がかかるという強大な圧迫を日々受け続けています。飛んだり跳ねたりといった衝撃にも耐えています。よほど特殊な病気でもなければ、走るたびに足の裏に激痛やしびれを感じる人はいません。高所から転落して足の骨が折れてしまうような事態においてさえも、彼らは“無傷”です。

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    『からだの隅々にいきわたる神経だからこそ、すこぶる頑丈に作られている』

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そう考えるほうが、はるかに自然だと思いませんか?

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椎間板ヘルニアにおいても障害を受けるのは末梢神経です。

ヘルニアでの被害者(神経根)は「被膜(神経上膜と神経周膜)を欠いているため弱い」と医学的に説明されますが、実際にはそうした弱点を補って余りあるほどに厳重-硬膜・クモ膜・軟膜・脳脊髄液-に守られています。

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ここで末梢神経の障害が引き起こす症状について整理しておきます。 以下の原則はヘルニア症例にも当てはまります。

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          『運動神経が障害されると、筋力低下といった“運動麻痺”になる 

         例)・上肢におこれば「手首を持ち上げられない。物をつかむことができない」など。  

         ・下肢におこれば「足首が持ち上がらない。つま先立ちができない」など。

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          『感覚神経が障害されると、触覚&痛覚消失といった“知覚麻痺”になる』    

 例)・触っても分からない、熱さを感じない、思いっきりつねっても痛みを感じないなど。

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一般には「神経が圧迫されるために痛みが出る」と説明されるケースが多いわけですが、事実は全く正反対です。感覚神経が障害されると、感覚を伝える信号が遮断されるので、触覚や痛覚が脳に届けられない状態すなわち麻痺になるのです。つまり『痛みが出るのではなく、痛みがなくなる』のです。極めて根本的な摂理です。

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ただし、変性をおこしている感覚神経に刺激を加える-たとえばペアン鉗子や鑷子などで神経をつまむ-と、“異所性発火”と言って、そこから痛み信号が出ることが実験モデルによって確かめられています。「神経の圧迫で痛みが出る」と現代医学が考える根拠は、こうした実験報告によるところが大きいのです。

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しかし現実の生体において、異所性発火がおこる場面は極めて特殊なケースに限られると私は思っています。次章ではこの問題について考えてみたいと思います。

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今回のポイントの整理!

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      ①末梢神経は3重の膜によって保護されている人体版の電器コード。

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      ②神経への圧迫は痛みではなく麻痺になる。

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②ヘルニアは脊椎を守る防御反応 Prev Nexxt ④神経の変性≠痛み(その1)

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