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椎間板ヘルニア-②ヘルニアは脊椎を守る防御反応

2011/10/30

②腰椎椎間板ヘルニアは脊椎を守る防衛反応

《トップページ》

椎間板ヘルニアの詳細については《椎間板のパラダイムシフト》をご参照ください。

前回の稿ではヘルニアは
正常人の7割に見つかる という衝撃的なデータを披露し、画像診断≠確定診断というお話をさせていただきました。

当院のデータではMRIの結果と合致する本物のヘルニアは2%以下です。この数字は他院で椎間板ヘルニアと診断された患者さん100人を診た場合、そのうち2人が本物のヘルニアだったということを意味します。

正真正銘本物の椎間板ヘルニアというものは、たとえば下肢に明らかな麻痺のあるもの、あるいは直腸膀胱障害のあるものです。

それ以外の痛みとしびれを訴えるもののほとんどはヘルニアとは無関係です。事実それらにおいて、脳に働きかける治療-BFI(体性感覚刺激による脱感作と再統合法)-を行うと、98%の痛みが改善します。

つまり椎間板ヘルニアとはいったい何なのかという問いに対しては、既に答えが出ているのです。すなわちヘルニアは生理的な変化であって、病理的な変化ではないということです。

MRIでヘルニアと診断された人が、保存療法のみで完治する例が後を絶たないという事実。EBM によって明らかになった正常人の7割以上にヘルニアが見つかるという事実。これらの事実を合理的に説明し得るベストな答えはどう考えても、ヘルニアとは生理的な変化であるという結論しかありません。

さらに申し上げるなら、ヘルニアは脊椎の関節機能を守る安全装置とさえ言えるのです。私はヘルニアとは究極の“防衛反応”だと考えています。その理由をお話しする前に髄核について簡単に触れておきます。

椎間板の中心にある髄核はその多くが水分から成る半液状の球状物質で、椎間板のクッション性能-椎間板の弾性度(反発度)-を決定します。この髄核の性状は生涯に渡って同じというわけではなく、実は生後10年が経過すると、髄核を構成する組成物質が変わると同時に弾性強度が低下していくことが近年の研究で明らかとなっています。

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幼少期における変性のない髄核は高性能すなわち高反発であり、分別のない子供が高所から飛び降りるような危険な行為に及んだとしても、それに耐え得る高性能クッションを持っていると言えます。

高反発である髄核は生後10年というモラトリアムを経て思春期
以降、成人の骨格に変わっていくと同時に変性が進行し、徐々に低反発に変わっていきます。分別の備わる思春期以降は自らの身体性能を理解し、無謀な行為はしなくなるため、高性能である必要性が相対的に低くなるからだと考えれます。同時に椎間板の上下に隣接する骨を守ることのほうが優先順位として上位になってくるのです。

もし髄核の変性が一生涯起こらず、つまり高齢になっても高反発のままだとすると、骨(椎体)が耐えられず、圧迫骨折や“いつの間にか骨折”といった経年劣化による骨の変性がおきやすくなります。骨を守るためには椎間板の性能は徐々に低下、すなわち低反発に変わっていったほうが総合的な視点においてバランスがいいと言えるのです。


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また心身環境因子等によって脳の働きが低下する(一部の神経回路の活動亢進と別の神経回路の活動低下といった脳神経活動の偏りが生じる)と、
関節反射の中枢である小脳機能の一部が不安定になることがあります。すると椎間関節(背骨の関節)の内圧制御が不完全な状態になるため、その前方に位置する椎間板に大きな負荷がかかるようになり、椎間板自体の内圧上昇が常態化します。

内圧上昇にさらされている椎間板は、空気圧を限界近くまで高めたタイヤにたとえることができます。その結果、パンパンに膨れ上がったタイヤに挟まれている椎骨に強大な圧が加わるため、椎骨の圧迫骨折のリスクが高まると同時に、椎骨後方にある椎間関節への負担がさらに増してしまうという悪循環に陥るのです。

のような状況下においては、椎間板は自らの内圧下げることで、脊椎機能のバランスを保とうとします。すなわち内部の髄核を外に放出させることで圧を下げるタイヤのパンク(椎間板の破裂)を未然に防いている-です。

こうして椎間板の内圧が除圧されることで、椎骨と椎間関節が結果的に保護されることになります関節機能を守るために椎間板は自らその除圧を行って、脊椎全体のバランスを保っているのではないか、私はそう考えています(関節反射と関節内圧の関係についてはこちらをお読みください)。
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日本における腰痛研究の第一人者である菊池臣一氏も、その著書において、「我々の研究でもヘルニアを有する椎間板の内圧は例外なく低値を示します椎間板造影をする際、正常な椎間板に造影剤を注入するには極めて大きな力を要しますが、ヘルニアのある椎間板に造影剤を注入するのは容易です」と述べています。これなどはまさしく私の説を裏付ける事象だと言えます。
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ただし、ここで一つの疑問が生じると思います。ヘルニアが本当に安全装置だと言うなら、椎間板の除圧のために外に出た髄核(=ヘルニア)が神経を傷めつけてしまっては本末転倒ではないか!ということです。
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実はMRIに映し出される“神経の圧迫映像”-人々を恐怖のどん底に突き落としたあのMRI写真-には重大なトリックが隠されています。MRIは強力な磁気を当てることで生体内のプロトン(H原子)の動きを画像処理したものであり、水分や脂肪の含有量によって映像が加工されます(T1強調やT2強調など)。

そのため神経組織より水分量の多い髄核を強調した画像を“作る”ことができるわけですが、ここで致命的な過ちはMRIは2次元画像だということです。神経の周りにある髄核があたかも神経を“凹ませている”ように見える2次元画像が本当に圧迫像であるかどうかは精密な3次元画像、それもプロトンの映像処理に頼らない別次元の画像技術でなければ分からないはず…。


仮に神経への接触が高度だったとしても、
実は生体の免疫機能や代謝機能が正常であれば、髄核のほとんどが無害の存在であり、そもそもヘルニアの9割は自然消滅することが分かっています

なぜ無害と言い切れるのか?これを説明するためには髄核の物質的強度、末梢神経の構造や機能、絞扼性神経障害の臨床、CRPS(RSD)の病態などをお話しする必要があります。これらについては後ほど別ページで解説していく予定です。

ここではとりあえず「“神経への接触や圧迫のみでは、実はヘルニアの臨床モデルは成立しないという重大な事実があるという前提を開陳させていただいたうえで、現時点における私の考えを略述させていただきます。椎間板の膨瘤については別の章で詳述します。ここでは髄核脱出タイプについて私論をすすめてまいります。
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免疫力が落ちている生体では、常在細菌(本来人体を守ってくれている細菌)が病原体に変身してしまう日和見感染を起こすことがありますが、これとまったく同じ理屈で、健康体にとっては生理的変化に過ぎない髄核と神経との接触が、免疫代謝系の問題を抱えた生体ではその局在部位に化学変化が生じ、場合によっては一過性の炎症を起こすことがあるのです。

ただしこの際の痛みは数日のうちに消退するレベルのものです。このレベルにおいて、さらに交感神経の機能不全が合併すると、CRPS(RSD発生することで症状(痛みやしびれ)が増悪して持続性となり、やがて神経管内の浮腫によって伝導障害が誘発され、それがさらに長期化すると、神経そのものが委縮し麻痺となって現れてくるのです。

ですから水際でCRPS(RSD)の発生を防ぐことができれば、多くの患者さんが手術台に上ることがなくなるはずです。ヘルニアの謎を解き明かす鍵はCRPS(RSD)にあるのです。
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したがって私は椎間板ヘルニア(髄核脱出タイプ)に対して次のようなステージ分類が成り立つと考えています。

stage1-椎間板内髄核の脱出(神経への接触や圧迫があっても、その多くは無症候性

stage2-神経の接触部位での化学変化(炎症性変化

stage3-RSD(交感神経機能不全による神経管内の浮腫)による神経伝導障害と症状の増悪

stage4-神経実質の変性(委縮)による麻痺の出現

前述したとおり、免疫もしくは代謝機能が低下している生体では、日和見感染と同じ理屈で、無害のはずのヘルニア(=髄核)が神経を侵す悪者に変身してしまうというだけのことです。健康体ではそのほとんどが上記のstage1のまま何事もなく済んでいると考えられます

以下に各stageごとの主だった症状を列挙します。

stage1-基本的には無症状だが、ヘルニアとは無関係の“別次元の原因”から下記の症状が発生。症状が出ているそのタイミングでMRIを撮れば、画像診断上は“椎間板ヘルニア”。無症状なら“MRIヘルニア”。安静時痛、運動時痛、神経支配領域と完全に一致しないしびれ感や知覚異常、運動障害など(ぎっくり腰及びそれに近い激痛を発症するケースも有)
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stage2-『運動時痛(発作的)、神経支配領域とほぼ一致する領域のしびれ感や知覚異常、運動障害など』(神経支配領域に一致する所見は一過性のもので、数日以内に消退する。症状が数週間以上持続する場合は“別次元の原因”)

stage3-『高度の安静時痛あるいは運動時痛。神経支配領域と一致あるいは不一致の知覚異常と運動障害の増悪。ごく軽度の麻痺-歩行はできるが、つま先立ちはできないなど-』(“別次元の原因”が合併しているケースも有)

stage4-『完全麻痺の症状-歩行不能、直腸膀胱傷害など-』(“別次元の原因”が合併しているケースも有)

したがって
stageのみが手術の適応だと言えます。以上が椎間板ヘルニアに対する私の推論-仮説-です。

ただし、「ヘルニアは脊椎の関節機能を守るための安全弁として作用している」という自説に関しては、仮説云々でなく、厳然たる事実だと考えています。だからこそ正常人にも多数見つかっているのです

椎間板ヘルニアと診断された患者さんのうち、9割以上がstage1の人たちであり、全く別次元の原因から症状が出ているに過ぎません。保存療法の現場がそれを証明しています

ヘルニアは悪人ではなく、私たちの背骨を守るために欠かせない存在です。現代医学はそんなヘルニアを一方的に悪者扱いし、人々に誤ったイメージを植えつけてきました。おそらく100年後の科学者は医学史に残るミスリードだったと評価しているはずです。

目に見える変化に惑わされて、現象の真の姿を見抜くことに失敗した“歴史的交絡因子”のひとつであり、『形の変化=痛みの変化』という先入観がもたらした誤謬だったと言えます(交絡因子についてはこちらのページで解説してあります)。

現代の補完代替医療のなかには、「椎間板ヘルニアを治す」と公言して憚らないものが多数存在します。治すべき対象はヘルニアではなく、全く別次元の問題であるにもかかわらず…。たしかにヘルニアそのものを治したかのように宣伝したほうが、患者さんに分かりやすい安心感を与えることができるのも事実でしょう。
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しかし実際に良くなっている人々はヘルニアを治してもらったわけではなく、ヘルニアとは別次元にある【脳の働き】が正常化したために、結果として症状が改善しているに過ぎません。
                ⇒椎間板ヘルニアの真実-医学史に残る巨大な錯誤-

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痛みやしびれの真の原因は、脳の問題です。  ⇒痛み記憶の再生理論

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今回のポイントの整理!

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.          ヘルニアは生理的な変化であって、病理的な変化ではない。

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     ②ヘルニアは脊椎機能のバランスを保つ安全装置。

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     ③椎間板の破裂(パンク)を未然に防ぐために放出される髄核は、健全なる神経にとっては本来無害な存在(←

       こちらでその理由を解説)。

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     ④飛び出した髄核が神経を変性させる原因は、生体の免疫機能低下。

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     ⑤ヘルニア症例の90%以上が上記③に当てはまるものであり、もしそこに何らかの症状があるなら、

       それは別次元の要因によるもの。

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   ①ヘルニア-画像診断の矛盾- Prev Nexxt ③末梢神経の圧迫で痛みは生じない

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