BFI 研究会代表ブログ

フォト

カテゴリー

無料ブログはココログ
2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

椎間板ヘルニア-⑦神経の変性≠痛み(その4)-

2011/12/16

⑦神経の変性≠痛み(その4)

《トップページ》
本題に入る前に二点だけ確認させていただきます。

このシリーズを最初からお読みになっている方には不要な説明ですが、単に“神経”と表記した場合、ここでは末梢神経を指します。“神経の変性”というフレーズに関して、たとえば神経変性疾患というと、医学的にはパーキンソンなどの中枢系の疾患を指す場合がありますので、その違いにご留意ください。

もう一点は“変性”と“炎症”の違いについてです。

私がこれまで述べてきた神経の変性とは、物理的あるいは化学的な要因から軸策輸送、活動電位、シナプス伝達、血管の微小循環等といった神経機能の性質が変わることを意味します。その最たるものが脱髄ニューロンを包む絶縁体の融解)です。神経に炎症が発生すると、その結果として変性が生じますが、炎症がないまま変性するケースもあります。

ですから厳密には変性≠炎症と言えますが、「変性にせよ炎症にせよ、そのどちらにおいても異所性発火を引きおこす」という現代医学の主張に異を唱えるという私論の観点から、ここでは変性=炎症という狭義の言語表記をさせていただいております。

さて、前回はからだの中の炎症を見張る“サイレント受容器”にスポットを当て、その機能を切り口に異所性発火の問題を考えてみました。

今回は信号の意味について受け取る側の視点で考えてみたいと思います。

侵害受容ニューロンの伝達速度(秒速30m)が速い理由は、損傷の発生を脳に瞬時に知らせることによって回避行動を促し、組織を守ることにあります。手を切った瞬間に痛みを感じなければ意味がないわけです。その他の感覚ニューロンも含め、総じて感覚神経というのは脳が瞬時に認識しなければならない情報を伝えるホットラインすなわち緊急回線だと言えます。

炎症下の組織に加えられる機械的な刺激も、“損傷”に準じる危険情報であるため、サイレント受容器は緊急回線を使用します。他方、単に炎症の存在を知らせる連絡に関してはのんびりとした液性伝達を採用しているのです(前ページにおいて解説済み)。

侵害受容ニューロンによって届けられる信号は組織の損傷を知らせるサインですので、その痛みはシャープな性質をもっています。そのため「切った瞬間に手を離す」という瞬時の回避行動に直結するわけです。

それに対し炎症の存在を知らせるサイン(液性伝達による神経ホルモン)は、受け取る側にとって本来マイルドな信号です。いわゆる電激痛や鋭利痛のような衝撃的な痛みとは違い、軽い鈍痛か違和感に近いものです。このとき脳が正常な状態であれば、当然その違いを認識するわけですが、痛み中枢の活性化-レセプターの増殖や側座核の機能低下-がおきると、マイルドな信号に対しても激痛を覚えるようになります(これについてはRSDの章で解説します)。

サイレント受容器が炎症の存在を送信する際わざわざ液性伝達を採用しているのは、伝達方式を変えることで情報の質の違いを脳に認識させるためです。

情報レベルはその緊急性によって以下のように分けることができます。

     レベル1…組織の損傷

     レベル2…炎症下の組織に加えられる機械的な刺激

     レベル3…炎症の存在

レベル1瞬時の回避行動を、レベル2即時的な回避行動を、それぞれ脳に促すため緊急回線による伝達が行われます。

前ページの繰り返しになりますが、レベル2の分かりやすい例が胃の内壁に炎症があるケースです。食物による機械的な刺激が加わると、サイレント受容器が反応します。食べることで痛みを感じるわけですので、当然その直後に食べるのを止めるという回避行動につながります(動物界では人間だけが特殊な回避行動をとる)。

足首を捻挫したあとに炎症が発生すれば、動き(機械的な刺激)によって痛みを感じますので、足首を曲げないようにしようとする回避行動が生まれます。胃と足首、いずれのケースにおいても即時的な対応が組織防衛につながるわけです。

その一方でレベル3(炎症の存在)に対しては緊急、即時的な回避行動のとりようがないわけで、緊急回線を使う必然性がまったくありません。胃の炎症に対して何か具体的な回避行動をとることで、その場で炎症が瞬時に消えるということはあり得ないことです。そのためサイレント受容器によって“のんびりとした液性伝達によるマイルドな信号”が届くことで中長期的な対策が求められることになります。つまり考える時間が与えられるのです。体調の異変を察知することで、翌日の行動内容を変える-デパートに行くのを止める、旅行をキャンセルするなど-といった回避行動につながわるわけです。

このように情報内容の緊急性によって信号の伝達スピードや伝達様式が異なる仕組みは、脳にとってたいへんありがたいシステムです。膨大かつ多彩な情報を24時間受信し続ける脳にとって、「緊急の対応が迫られるもの」と「そうでないもの」が区別されて届く体制は、情報処理の効率化という点において非常に優れたシステムだと言えます。

これは私たちの現実社会とまったく同じです。多忙を極めるビジネスの現場では即答が欲しい場面では電話を使い、緊急性のない用件にはメールを使うというのが常識です。もしすべての案件を通話ですまそうとしたら、複雑化したグローバル社会のビジネスはその効率性を奪われて、大半の企業は立ちゆかなくなるでしょう。

人間の脳も800億からなる神経細胞による複雑なネットワークを形成しています。情報処理の効率化こそが脳機能そのものだと言っても過言ではないくらいです。

したがって正規の手続きを踏まずに届けられた情報に対しては、脳は恐ろしいほどの混乱を示します。神経を直接ぶつけたときの信号(異所性発火)を受け取った際の反応がその最たる例で、脳は尋常でない感覚を生み出してしまうわけです。

ただし、なんといっても脳が一番混乱するのは、やはり緊急性のない情報が緊急回線を通して届けられてしまうケース-神経の炎症を知らせる異所性発火-でしょう。回避行動のとりようのない情報が緊急回線によって届けられてしまうと、脳はどう対応していいのか分からず相当に混乱するはずです。

119番の通報を受けて、さあ出動だ!と消防署員がいっせいに立ち上がった刹那、実は電話の中身が署員の身内からのプライベートな連絡だったというのと同じです。そういう連絡に119番を使うな!携帯にメールしろ!ということになるわけです。

同じ異所性発火でも、肘をぶつけた際のそれには回線本体を襲った強い衝撃を知らせると同時に即時的な回避行動を要求する-2度と同じ場所をぶつけるな!-というメッセージが含まれるため、緊急性のある情報と見なすことができますが、しかし、その一方で回線の炎症を知らせるために自ら異所性発火をおこし続け、その上で自らを使って脳に連絡し続ける“神経痛(神経の炎症を知らせる信号)というのは、悪質クレーマー以外の何物でもありません。

本来液性伝達によって届けられるはずの、脳に考える時間を与えてくれるはずの、そういう性格の信号が緊急回線を通して幾度も幾度も連続して届けられるのです。脳にとってこれほどの異常事態は他にない言えます。

脳は1秒間に1000万ビットを超える情報を処理すると言われています。そのように超多忙を極める脳が、正規の手順を踏まない形で届けられる極めて異質な情報(異所性発火による信号)を柔軟に受け入れ、なおかつそれを弾力的かつ継続的に解析し続ける余力など絶対にないというのが、私の考えです。

本来メールで受け取っていた連絡がすべて電話で届くようになったら、電話回線はパンク寸前となり、社員はその対応に追われて本来の仕事がまったくできなくなり、ほとんどの企業はお手上げ状態です。私がCEOだったらあらゆる次元のプライオリティーを熟考したうえで、会社の機能を守ることを最優先するでしょう。そのために必要とあらば回線を切ることも厭いません。

脳だって同じです。もし私がペンフィールドの身体図(一次体性感覚野)だったら、そんな信号の受信は断固拒否します。間違いなく無視するでしょう。現実の電話回線の場合はモジュラージャックを抜けばすむ話ですが、もちろん脳はそうはいきません(ゲートコントロール説が不完全なことは周知の事実)。たからこそ、そもそも脳は、いいえ神様はそういうシステムを作らない!というのが私のスタンスです。

今回のポイントの整理!

①病変を知らせる信号はその緊急性の違いによって、伝達ルートも信号の性質も異なっている!

②1000万ビット/秒の情報を処理する脳にとって、緊急性のある情報とそうでない情報が区別されて届くシステムは生命線!

③そのような脳に「既存のシステムを無視した形で届く極めてイレギュラーな情報」を継続して受信し続ける余力などない!

.

.

  ⑥神経の変性≠痛み(その3)Prev Nexxt ⑧神経の変性≠痛み(その5)

.

.

.                                 トップページに戻る

         ≪三上クリニカルラボ≫      ≪BFI研究会≫

BFI 研究会

Facebookページも宣伝

その他のカテゴリー

100年プロジェクト-「母、激痛再び」の衝撃に想ったこと- | 9/24一般講演会を終えて-参加者の声- | BFI テクニック序論-基本的な考え方および検査等- | BFI 技術研修会のプログラム詳細 | BFI 研究会のホワイトボード | BFI 研究会代表あいさつ-NHKスペシャルが開いた扉の先にあるもの- | BFIの技術-最新版- | CRPS(RSD)-1)痛み・しびれと神経の本当の関係- | CRPS(RSD)-3)そのとき鈴木さんに何がおきたのか?- | CRPS(RSD)-4)鈴木さんが回復した理由- | CRPS(RSD)-基礎知識- | CRPS(RSD)-2)痛み信号の通り道と自律神経(ANS)- | CRPS(RSD)-プロローグ- | EBM(根拠に基づく医療)とは何か? | H29年7月のアップデートおよび比較試験の結果報告 | VASによる治療効果の判定シート | “治療的診断”に潜む論理的錯誤(ロジックエラー) | ①BFI 入門編-脳にアプローチする治療家にとって絶対的不可欠の心構え- | ぎっくり腰の真実-脳の自衛措置- | デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と自律神経の関係を考察する-BFIとシャムの比較試験より- | ニューロフィクス(neuro-fixed)という視点 | フィンガートラクション-その意義について- | プライトン固定セミナー | 体幹プライトンシーネ(元ほねつぎの母が脊椎圧迫骨折???) | 前腕骨骨折における上肢ギプス二重法 | 古今東西あらゆる痛み治療は最終的に“同じ場所”にアプローチしているという見方 | 外傷の痛み(ハードペイン)を再考する | 小脳へのアクセス-なぜ“関節”なのか?- | 役割分担-臨床研究と基礎研究とランダム化比較試験(RCT)- | 椎間板のパラダイムシフト(前編) | 椎間板のパラダイムシフト(後編) | 椎間板ヘルニア-①画像診断の矛盾- | 椎間板ヘルニア-②ヘルニアは脊椎を守る防御反応 | 椎間板ヘルニア-③末梢神経の圧迫≠痛み- | 椎間板ヘルニア-④神経の変性≠痛み(その1)- | 椎間板ヘルニア-⑤神経の変性≠痛み(その2)- | 椎間板ヘルニア-⑥神経の変性≠痛み(その3)- | 椎間板ヘルニア-⑦神経の変性≠痛み(その4)- | 椎間板ヘルニア-⑧神経の変性≠痛み(その5)- | 椎間板ヘルニア-⑨髄核の脱出≠圧迫 | 椎間板ヘルニア-⑩物理的な圧迫≠炎症の発生- | 椎間板ヘルニア-⑪椎間板の変性≠痛み(その1)- | 椎間板ヘルニアの真実-医学史に残る巨大な錯誤- | 母指3次元固定法(母指球安定型プライトン) | 無意識下情報処理が痛みや関節拘縮を改善させり理由-DMNとミラー療法- | 無意識下情報処理が痛みや関節拘縮を改善させる理由①-脳内補完とソフトペイン- | 疼痛概念のパラダイムシフト(前編)-AKA-博田法➡関節拘縮➡ANT➡シャム➡脳- | 疼痛概念のパラダイムシフト(後編)-セルアセンブリ➡脳内補完➡ソフトペイン- | 痛みと交絡因子とBFI-科学の視点- | 痛みの原因論の二極化(肉体?or 脳?)について一番分かりやすい説明-ソフト論、ハード論とは何か?- | 痛みの成因1)脳と心身環境因子 | 痛みの成因2)脳と内的要因 | 痛みの成因3)症状は生体の弱点に | 痛みの成因4)環境病という視点 | 痛みの成因5)五感力と食生活 | 痛みの成因6)カウンセリングの意義 | 痛みの成因7)ストレス説を斬る!-過去を封印して生きるということ- | 痛みの成因8)ストレス説を斬る!-ストレス≠痛み- | 痛みの成因9)ストレス説の皮相性を斬る!-脊柱管狭窄症と“気づき”の道程- | 痛み記憶の再生理論-セル・アセンブリのフェーズ・シーケンス- | 皮膚回旋誘導テクニック | 私の原点 | 脳疲労とは何か? | 脳膚相関-脳と皮膚の関係-を考える | 腓腹筋ラッピングシーネ | 腰痛-①腰痛治療の現状- | 腰痛-②痛みの科学的研究- | 腰痛-③整形外科の歴史と慢性痛- | 腰痛-④画像診断が意味するもの- | 腰痛-⑤腰痛の85%は原因不明- | 膝関節における前面窓式プライトン固定 | 自律神経測定による“治療効果の見える化”と代替報酬 | 触覚同期ミラーセラピー | 足底プライトンシーネ(ほねつぎの妻が骨折!) | 足関節捻挫における f-(ファンクショナル)プライトン固定 | 関節7つの精密機能-1)応力を分散させる免震機能(関節包内運動)- | 関節7つの精密機能-2)振動を吸収する制震機能(脳を守る骨格ダンパー)- | 関節7つの精密機能-3)衝撃をブロックする断震機能(関節内圧変動システム)- | 関節7つの精密機能-4)関節軟骨の神秘(“知的衝撃吸収”機能) | 関節7つの精密機能-5)関節軟骨の神秘(驚異の摩擦係数) | 関節7つの精密機能-6)潤滑オイルの自動交換システム(滑膜B型細胞の“受容分泌吸収”機能) | 関節7つの精密機能-7)関節受容器によるフィードフォワード制御 | 関節反射ショック理論 | 4スタンス理論と関節神経学の融合-4スタンス×8理論-