BFI 研究会代表ブログ

フォト

カテゴリー

無料ブログはココログ
2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

痛みの成因8)ストレス説を斬る!-ストレス≠痛み-

2013/08/31

痛みの成因8)ストレス説の皮相性を斬る!-ストレス≠痛み-

《トップページ》
前稿では『内観力を封印している方に“ストレス説”は無力』という話をさせていただきました。

ここからは『痛みのソフト論”を伝える際、“ストレス”や“心”といった用語の使用はくれぐれも慎重に』という持論を展開してまいりたいと思います。

昨年、岐阜新聞に掲載された朝日大学村上祈念病院准教授のコメント…

『最近の研究で、慢性腰痛症が患者の心理的、社会的因子と関係していることがわかってきました。平たく言うと、ストレスが腰痛に関係しているということです。近年では精神・心理学的アプローチによる治療が行われています。患者さんの抱えるストレスや悩みに医師が耳を傾け、患者さんに不安や悩みを話してもらい、気持ちを楽にしてあげることで、腰痛の軽減をはかるというものです。一種のカウンセリングともいえるこの方法は、一部の患者さんには有効です」⇒記事全文はこちら 

.

このように医学界は痛みの成因について、従来のハード論からソフト論に舵を切り始めており、なおかつ心理社会的因子という旗印を掲げて事実上のストレス説を展開しているわけですが、“ストレス”という切り口では、真の救いにはなり得ないと私は思っています。

.

なぜそう思うのか?その理由を説明するため、私はこれまで内観哲学の問題に焦点を当ててきましたが、痛みの臨床において、そもそも“ストレス”がいかに皮相的な概念であるかを強調させていただきたいと思います(その具体例ついては次回詳細に…)。その前に、ストレスについて簡単におさらいしておきます。

.

本来ストレスという用語は、材料力学において、物体に力が加わった際の内部応力を指したものです。医学用語としては、1930年代にカナダの生理学者ハンス・セリエが、ストレス学説を唱えて以来、大局的な病因論として認知されており、さまざまな病気がストレスによって引きおこされることは周知の事実です。

.

昨年、私は痛みの原因を脳のシステムとして捉えたソフト論(痛み記憶の再生理論)を発表し、脳に影響を与える要因として“心身環境因子”という概念を提唱しました(こちらのページで詳しく解説しています)。

.

現代人が抱える体調不良や生活習慣病、そしてガンから脳卒中に至るまで、そのほとんどは“環境病”に過ぎず、痛みの問題もまさしくその渦中にあるという見地から、“心身環境因子”という言葉を造語し、私はこれを外的要因と内的要因に分けました。この両者はそれぞれ外的ストレッサーと内的ストレッサーに言い換えることができます。ちなみに外的ストレッサーには「けが、肉体労働、不自然な姿勢での作業、長時間の同一姿勢など」があり、内的ストレッサーには「薬害、食害、心的ストレスなど」があります。

.

先述したとおり、医学界はソフト論への移行を進めていますので、今後痛みの臨床現場で使われるストレスという言葉は、“心的ストレス”を指すケースが多くなっていくであろうと推察されます。

.

ここで私が強調しておきたいのは、『“ストレス”イコール“痛み”ではない』ということです。心理的なストレスはたしかに痛みの引き金になり得ますが、あくまでもきっかけの一つに過ぎません。現代医学は心と痛みの関係を解明したわけではなく、「痛みのメカニズムははっきり分からないけれども、心の問題が関与している」と言っているだけなのです。

.

胃潰瘍では「ストレス⇒胃の粘膜の潰瘍⇒胃の痛み」という分かりやすいロジックがありました(今ではここにピロリ菌が加わります)が、腰痛の場合「ストレス⇒〇×△⇒腰の痛み」において、〇×△がいったい何なのか定かではありません。また、そもそも肉体病変は必須なのかどうかも分かっておりません。つまり心的ストレスを受けた結果、肉体に何らかの病変が生じて痛みを出しているのか、それとも脳が直接痛みを引きおこすのか、そのあたりのことは言明されていないということです。痛みの発生源は肉体なのか、それとも脳なのか、いったいどちらなのか?医学界のスタンスは不明ということです。

.

こうした現状にあって、仮説の域にとどまる話で誠に恐縮ではありますが、不肖三上が次のように喝破しているという図式になっています。

.

「肉体は関係ない!あくまでも脳の問題である!ストレスを受けると、脳内においてニューロン活動の不調和(偏り)が生じ、小脳や島皮質の活動異常に伴って、痛み記憶を形成するセル・アセンブリ(神経回路)が賦活化される。加えて不安や嫌悪感の高まりによって扁桃体の過活動や海馬の機能低下が引き起こされ、セロトニンやオキシトシンの分泌量が低下する。将来的に脳機能の検査技術の進歩によって、いずれ多くの痛みが脳の次元で説明されるようになる!

.

トリガーポイントなどを前面に掲げて、○×△の箇所に「筋肉の血流低下」を当てはめる考え方もあるようですが、私は筋に現れる変化は結果であって、原因ではないと考えています。まず脳の問題が先行して痛みが現れ、その痛みに対して個体性能に則した自律神経の反応がおこり、その結果さまざまな理学所見(筋の虚血、過緊張、低緊張、腫脹、浮腫等)が生み出されてくるというのが私の考えです。

.

運動器の痛み、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、CRPS(RSD)、うつ病性疼痛、慢性頭痛等には、共通した潜在メカニズム-中枢感作(central sensitization)-が内包されており、その実態は“痛み記憶の再生”に過ぎない。トリガーポイント注射の効果においても、最終的には中枢レベルに働きかけた結果だというのが私の推考です。

.

ですから、脳(ソフト)の問題が解決すれば、自ずと筋肉(ハード)の問題も改善します

痛みの原因はあくまでも脳内におけるシステムの問題です。ストレスに対して脳がどのように反応するのかによって、症状の現れ方が違ってきます。痛みになるときもあれば、しびれになるときもあれば、凝りにになるときもあれば、何も出ないときもあります。

ストレスイコール痛みではなく、「ストレス➡脳内環境の変化➡痛み」なので、その時々の脳の状態、あるいは脳の個体差によって痛みになるかどうかは著しく変わってくるということです。

ストレスに強い脳、ストレスに弱い脳があるということです。ちなみにふだんから五感の刺激をポジティブに感じたり、マインドフルネスなどを日常に採り入れることでストレス耐性を高めることが可能と言われています。



椎間板ヘルニアにおいては(当ブログの随所で取り上げているとおり)、正常人にも多数見つかることが判明しているため、今では「MRIの結果は参考所見に過ぎず確定診断にならない」ということは、痛みの専門家のあいだではもはや常識です。

それを裏付けるようにヘルニアの手術件数は減少の一途をたどっています。ヘルニアと痛みの関係が一致しないという事実は、手術そのものの妥当性にクエスチョンマークがついていることを意味しますが、それではなぜ“疑問符のついた手術”で痛みが消える症例があるのか?

これについては全身麻酔による脳への鎮痛効果とプラセボ効果だと考えられます。手術結果がプラセボ効果に過ぎないと思われる疾患は他にもいくつかありますが、なかでも脊柱管狭窄症の一部-神経脱落症状(麻痺所見)とは別次元のしびれ(錯感覚)や痛みを主訴とするタイプ-は間違いなく“痛み記憶の再生”と“しびれ記憶の再生”に因るものです。

.
私は手術後の再発症例をたくさん診てきましたが、ヘルニアや脊柱管狭窄症の手術後に再発した方々は大きく2つのタイプに分かれます。

ソフト(柔軟)な思考回路を持っており、“ソフト論”を受容できる-自らの認識を変えることができる-人たち。かたや強固な思い込みと思考の硬直があり、二重の意味での“ハード脳”に陥っている-どうしても心と痛みの関係を受け入れることができない-人たち。現状においては、後者のタイプが大多数を占めます。

後者の方たちは、もしかすると“島皮質の活動低下(自身の感情を認識する力が弱い)”を抱えているのかもしれませんし、あるいは手術に踏み切った自身の判断、周囲からの勧め、医師の自信たっぷりな説明、MRI 画像を見せつけられた際のインパクト…、そうした過去を全否定することができない心性が無意識にあるのかもしれません。

しかし、その後の人生の流れが好転しやすいのはどちらか…、もはや言うまでもないでしょう。もっともソフト論の受容ができなくとも、
些細な“気づき”があれば、それが救いにつながることも…

.

次回のテーマは“気づき”。

痛みの体験にはどんな意味が隠されているのか。人は痛みをとおして、何を学び、何を知り、どんな“気づき”を体験するのか。次回はそんな話をしてみたいと思います。

7)ストレス説の皮相性を斬る!-過去を封印して生きるということ-Prev
                                 
                                 Nexxt 9)ストレス説の皮相性を斬る!-脊柱管狭窄症と“気づき”の道程-

. 

                            トップページに戻る


         ≪三上クリニカルラボ≫      ≪BFI研究会≫              

その他のカテゴリー

100年プロジェクト-「母、激痛再び」の衝撃に想ったこと- | 9/24一般講演会を終えて-参加者の声- | BFI テクニック序論-基本的な考え方および検査等- | BFI 技術研修会のプログラム詳細 | BFI 研究会のホワイトボード | BFI 研究会代表あいさつ-NHKスペシャルが開いた扉の先にあるもの- | BFIの技術-最新版- | CRPS(RSD)-1)痛み・しびれと神経の本当の関係- | CRPS(RSD)-3)そのとき鈴木さんに何がおきたのか?- | CRPS(RSD)-4)鈴木さんが回復した理由- | CRPS(RSD)-基礎知識- | CRPS(RSD)-2)痛み信号の通り道と自律神経(ANS)- | CRPS(RSD)-プロローグ- | EBM(根拠に基づく医療)とは何か? | H29年7月のアップデートおよび比較試験の結果報告 | VASによる治療効果の判定シート | “治療的診断”に潜む論理的錯誤(ロジックエラー) | ①BFI 入門編-脳にアプローチする治療家にとって絶対的不可欠の心構え- | ぎっくり腰の真実-脳の自衛措置- | デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と自律神経の関係を考察する-BFIとシャムの比較試験より- | ニューロフィクス(neuro-fixed)という視点 | フィンガートラクション-その意義について- | プライトン固定セミナー | 体幹プライトンシーネ(元ほねつぎの母が脊椎圧迫骨折???) | 前腕骨骨折における上肢ギプス二重法 | 古今東西あらゆる痛み治療は最終的に“同じ場所”にアプローチしているという見方 | 外傷の痛み(ハードペイン)を再考する | 小脳へのアクセス-なぜ“関節”なのか?- | 役割分担-臨床研究と基礎研究とランダム化比較試験(RCT)- | 椎間板のパラダイムシフト(前編) | 椎間板のパラダイムシフト(後編) | 椎間板ヘルニア-①画像診断の矛盾- | 椎間板ヘルニア-②ヘルニアは脊椎を守る防御反応 | 椎間板ヘルニア-③末梢神経の圧迫≠痛み- | 椎間板ヘルニア-④神経の変性≠痛み(その1)- | 椎間板ヘルニア-⑤神経の変性≠痛み(その2)- | 椎間板ヘルニア-⑥神経の変性≠痛み(その3)- | 椎間板ヘルニア-⑦神経の変性≠痛み(その4)- | 椎間板ヘルニア-⑧神経の変性≠痛み(その5)- | 椎間板ヘルニア-⑨髄核の脱出≠圧迫 | 椎間板ヘルニア-⑩物理的な圧迫≠炎症の発生- | 椎間板ヘルニア-⑪椎間板の変性≠痛み(その1)- | 椎間板ヘルニアの真実-医学史に残る巨大な錯誤- | 母指3次元固定法(母指球安定型プライトン) | 無意識下情報処理が痛みや関節拘縮を改善させり理由-DMNとミラー療法- | 無意識下情報処理が痛みや関節拘縮を改善させる理由①-脳内補完とソフトペイン- | 疼痛概念のパラダイムシフト(前編)-AKA-博田法➡関節拘縮➡ANT➡シャム➡脳- | 疼痛概念のパラダイムシフト(後編)-セルアセンブリ➡脳内補完➡ソフトペイン- | 痛みと交絡因子とBFI-科学の視点- | 痛みの原因論の二極化(肉体?or 脳?)について一番分かりやすい説明-ソフト論、ハード論とは何か?- | 痛みの成因1)脳と心身環境因子 | 痛みの成因2)脳と内的要因 | 痛みの成因3)症状は生体の弱点に | 痛みの成因4)環境病という視点 | 痛みの成因5)五感力と食生活 | 痛みの成因6)カウンセリングの意義 | 痛みの成因7)ストレス説を斬る!-過去を封印して生きるということ- | 痛みの成因8)ストレス説を斬る!-ストレス≠痛み- | 痛みの成因9)ストレス説の皮相性を斬る!-脊柱管狭窄症と“気づき”の道程- | 痛み記憶の再生理論-セル・アセンブリのフェーズ・シーケンス- | 皮膚回旋誘導テクニック | 私の原点 | 脳疲労とは何か? | 脳膚相関-脳と皮膚の関係-を考える | 腓腹筋ラッピングシーネ | 腰痛-①腰痛治療の現状- | 腰痛-②痛みの科学的研究- | 腰痛-③整形外科の歴史と慢性痛- | 腰痛-④画像診断が意味するもの- | 腰痛-⑤腰痛の85%は原因不明- | 膝関節における前面窓式プライトン固定 | 自律神経測定による“治療効果の見える化”と代替報酬 | 触覚同期ミラーセラピー | 足底プライトンシーネ(ほねつぎの妻が骨折!) | 足関節捻挫における f-(ファンクショナル)プライトン固定 | 関節7つの精密機能-1)応力を分散させる免震機能(関節包内運動)- | 関節7つの精密機能-2)振動を吸収する制震機能(脳を守る骨格ダンパー)- | 関節7つの精密機能-3)衝撃をブロックする断震機能(関節内圧変動システム)- | 関節7つの精密機能-4)関節軟骨の神秘(“知的衝撃吸収”機能) | 関節7つの精密機能-5)関節軟骨の神秘(驚異の摩擦係数) | 関節7つの精密機能-6)潤滑オイルの自動交換システム(滑膜B型細胞の“受容分泌吸収”機能) | 関節7つの精密機能-7)関節受容器によるフィードフォワード制御 | 関節反射ショック理論 | 4スタンス理論と関節神経学の融合-4スタンス×8理論-