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ニューロフィクス(neuro-fixed)という視点

2016/01/27

ニューロフィクス(neuro-fixed)という視点

《トップページ》
運動器外来において患肢を固定する際、そこには大きく分けて2種類の固定概念があります。

ひとつは「
軟部組織損傷、関節炎、腱鞘炎等に対する安静目的の固定」。

もうひとつは「
骨折治療における外固定」。

後者はさらに2つに分けられます。受傷時に骨転位がなくその後も転位の心配がないケースと、整復して後も骨転位の恐れがあるケースです。

上記のいずれに該当するのかによって、固定に対する考え方は自ずと変わってくるわけですが、ニューロフィクス(neuro-fixed)という概念を採り入れることでケースバイケースで異なる固定法の違いを理解しやすくなります。

こちらのページにおいて関節拘縮の裏には脳の問題が隠れているというお話をさせていただきましたが、ニューロフィクス(neuro-fixed)とは「痛み・腫脹のコントロールおよび拘縮発生の予防」という観点から固定を作成しようとするものであり、従来にはなかった「脳の働き(可塑性)を重視する視点」によって生み出される固定法です。

拙論「
痛み記憶の再生理論」においては痛みの生成理由ならびに以下に示す新分類が提起されています。

・脳のシステムエラー(誤作動)であるソフトペイン
・組織の障害を知らせるハードペイン
・両者の混成痛ハイブリッドペイン


運動器プライマリケアにおいて患肢固定後に見られる関節拘縮および膝OAや四十肩に代表される有痛性疾患の二次性拘縮、これらの強さ(程度)は患者自身の先入観や体験、記憶等によって個人差が生じること、BFIという極微刺激やミラーセラピーによって拘縮そのものが改善し得ること、CRPS(RSD)ですら改善する場合があることなど…。

以上の事実から導き出された視点…、すなわち「関節拘縮の実態は脳における運動神経回路のシステムエラーが引き起こす筋協調性の完全なる破綻であり、その究極とも言える現象が主動作筋と拮抗筋の同時収縮あるいは協同筋と拮抗筋の同時収縮」という可能性。

例えば、肩手症候群の患者さんに発生した環指、小指の屈曲制限(自動的にも他動的にも屈曲不可)に対して、Guyon管での尺骨神経ブロックを行うと骨間筋の過剰スパズムが消失し、これにより手指の屈曲制限が完全回復することが報告されています。

こうした協同筋と拮抗筋の同時収縮は脳のシステムエラーに起因するものであり、肩手症候群のみに見られる現象というわけではなく、運動器プライマリケアにおいて極めて高頻度に遭遇する現象だというのが私の見方です。

AKA‐博田法による関節包内運動へのアプローチが拘縮を改善させる真の理由は、AKAのテクニックが私が唱えるところの無意識下情報処理に相当するため脳のシステムエラーを修復させる効果が含まれるという私見…。同様にANT(関節神経学的治療法)もその本質的な機序は脳に働きかけるテクニックであろうという私見…。

※無意識下情報処理については
こちらのページをご覧ください。

プライマリケアで遭遇する関節拘縮の多くが脳のシステムエラー(ソフトウェアのバグがもたらす拘縮)とも言うべき要因を抱えており、従来の医学が説明する「筋線維やコラーゲン等の組織学的変化による」とする言わば“ハードウェアの錆び付きによる拘縮”という捉え方は電子顕微鏡上の解釈であって、現実の臨床と100%合致するものではないという私見…。

これらの背景を鑑みて「脳の可塑性とそれに伴う筋協調性の乱れ」という現象を最大限考慮して行う固定法が
三上式プライトン固定(下画像)であり、その特異な形状はそうした“ソフト拘縮”という視点から生み出されています。

Pliton6

このように筋肉や関節だけを考えるのではなく、より中枢の次元(脳の働き)を重視して行う関節固定をニューロリハならぬニューロ固定すなわち
ニューロフィクス(neuro-fixed)と言います。

BFI は難治性疼痛のために開発された手技療法ですが、開発者の出自が建築と柔整という特殊な背景もあって、ことあるごとに免震システムと関節の運動システムとの共通性を披歴してきました。

関節への極微刺激がなぜ運動システムを変化させるのか、なぜ難治性疼痛までをも改善させるのかについては、物理センサやデバイスの仕組みとこれらを制御するコンピュータの役割ひいては脳の働きを知る必要があるわけですが、その詳細については当ブログの他の記事に譲るとして、ここでは“生体のゆらぎ”が鍵を握っていると言わせていただきます…。

近年のロボット開発において、例えば介護ロボットのジョイント制御のコンピュータプログラミングに生体の“ゆらぎ”を加えたところ、ロボットの動きが人間に近い自然な動き、滑らかな動きになったというニュースがありましたが、BFIという技術にもこの“ゆらぎ”が深く関わっており、さらにニューロフィクスにおいても重視される要因となります。

例えば骨折治療において「整復と骨癒合のみ」を重視するならば、患肢の固定というものは血流障害に留意した上で「とにかく骨転位を防ぐべく強固な固定であればいい」という帰結に立ちます。そこに“ゆらぎ”という視点が考慮されることはありません。

しかし「骨はついたけれども拘縮のリハに尋常ならざる苦痛が…、日常生活に大きな支障が…、耐え難い痛みが続いて…」といった症例(こうした患者さん方)と接した経験のある医療者であれば、骨折治療のゴールとは何か?固定とはどうあるべきか?という疑問と向き合った経験をお持ちの方もおられるはず…。

生体のゆらぎや脳の働きを熟考して固定を行うならば、固定処置というものはただ単に強固であればいいという発想にはなりません。

前述したように「主動作筋と拮抗筋の同時収縮(屈筋と伸筋の同時収縮)」といった次元の筋協調性の乱れが強固な関節拘縮に直結する恐れがある」という視点で固定を考えるならば、骨折治療であれ、関節炎の治療であれ、自ずと固定の形状や硬軟といった材質等の選択が変わってくるということです。

もちろんケースバイケースであることは言うまでもありませんが、“筋協調性破綻による拘縮”という視点で固定を考えたとき、プライトンのごとき適度な柔軟性というものは前述した“ゆらぎ”の視点から極めて有用性が高いと言えます。

例えば、膝に対する
前面窓式プライトン固定(説明記事はこちら)

Pict0024
説明記事の中で詳しく述べていますが、膝窩からの固定は拘縮リスクが高まるので、こうした形状による固定は非常に意義深いと考えられます。

耐用性に優れた高品質の弾性包帯(例えばエラスコット)を使えば、患者自身による取り外しも容易であり、日常生活の状況に合わせて臨機応変に着脱するよう指示して使用することができます。よほど不器用な患者さんでなければ、何度か自分で巻くうちにコツを覚え、状況によって強めに巻いたり、緩めに巻いたりして上手に使いこなすようになり、結果として拘縮発生の予防にも寄与します。


またこちらのページ『外傷の痛み(ハードペイン)を再考する』でも解説している通り、外傷の臨床においては純然たるハードペインよりハイブリッドペインに遭遇する場面が多いという現実があり、疼痛コントロールおよび腫脹コントロールの面からも、ニューロフィクスという言語化によるプロセスは意義深いと考えます。

患者さんの心理状態を観察し、
筋協調性の些細な変化も見落とさず、
自律神経とりわけ交感神経の働きに留意し、
痛みの既往歴や感受性を慮り、

ハイブリッドペインの可能性を常に視野に入れ、
脳膚相関に則り皮膚機能を重視し、
どのような固定法がベストであるかを考える。


これがニューロフィクスの大前提であり、そのうえで患肢が最もリラックスできる、患者さんの脳の興奮を鎮める状況をデザインするという概念が運動器プライマリケアの中核にあっていいのでないか。

“脳の興奮”とは、局所の神経回路の過活動あるいは局所の代謝亢進を意味し、脳疲労と換言することができますが、これを収めるためには“原因そのもの”を取り除く必要があり、場合によってはカウンセリング等の心理学的なアプローチを併用せざるを得ないケースもあります(私の場合これをルーティンに行っていますが)。

⇒脳疲労とは何か?-BFIの視点-

「脳の興奮を鎮める」という視点からは、固定の材質はもとより、実は固定材の表面(皮膚接触面)をどのような素材にするかといったことも非常に重要な部分となります。皮膚接触面のテクスチャー(質感、肌触り)はおざなりにできない箇所なのです。

なぜなら皮膚受容器からの情報入力それも持続性の情報は脳の興奮を助長することもあれば、鎮めることもあるからです。

当然そこには個人差という問題があります。例えば、洋服の生地に対して「心地いい、気持ちいい」と感じる素材は人によって違います。「綿がいい」という人もいれば、「麻が気持ちいい」と感じる人もいる具合で(ちなみに私は麻の質感が好き…)。

ですから一概には言えないのですが、より汎用性の高い、多くの人にとって不快に感じない、肌触りの優しい表面材として、私はオルソラップ(アルケア社)を使っています(下写真)。

Oruso
ニューロフィクスという概念においては、脳膚相関という視点が包含されており、表面材についても深慮されるべき対象となるわけです。

⇒脳膚相関(脳と皮膚の関係)を考える

同時に包帯の選択という問題も…。骨折に対するシーネ固定であれば“綿包帯”、それ以外の場面では“伸縮性包帯”の出番が多くなりますが、各々いろいろなタイプがあって、どれがいいのか悩ましい…。

綿包帯は基本的に医療者による“包帯を巻く技術”が前提であり、患者さん自身による巻き替えは想定されないわけですが、取り外しのできる装具(固定)においては、患者さん自身による巻き替えが想定されます。

この場合マジックテープ等による装着という選択肢もありますが、実際には伸縮包帯をチョイスする場面が多く、このとき弾性包帯を含め伸縮包帯による患部への圧迫力は極めて繊細な問題でありながら“脳の興奮”と密接な関係が推断されます

巻く側の人間が医療者にせよ、患者さんにせよ、患部の皮膚発汗レベルに影響を与える気温や湿度、発汗レベルの個人差、そして何より包帯そのものの品質等々…、こうした様々な因子による皮膚・軟部組織への圧迫レベルが、実は脳の情報処理システムに意外なほどの影響を与える可能性が…。

私はかつて整形にいたとき、外傷管理を担うスタッフには必ず自身へのシーネ固定体験やギプス巻き体験を課して、患肢固定下に置かれる状況を実体験してもらう勉強会を開いていました。

例えば、足関節の骨折を想定して下腿~足尖のギプスを巻いた状態で半日あるいは1日過ごしてもらうのです。すると、固定されている状態がいかにストレスフルなものか、患者さんの気持ちを理解しやすくなると同時に、固定技術の向上に繋がります。

もちろん私自身もそういう状況を何度も体現してきていますので、固定材の性能もさることながら包帯の圧迫力というものも非常に重要だと感じています。シーネ固定体験において、数種類の伸縮包帯で装着感を比較したことがありますが、伸縮性能の差はそのまま心地良さ、安心感の差に直結していました。


このようにニューロフィクスには様々な要因が含まれるわけですが、こうした視点から生み出されるプライトン固定の作成講習会を埼玉県で開催しています。

⇒「プライトン固定セミナーのご案内 」 



Semina

 

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◇プライマリケアに役立つ固定法(三上式プライトン固定)
1)
私が固定装具に機能性と美しさを求める理由
2)
ニューロフィクス(neuro-fixed)という視点
3)
外傷の痛み(ハードペイン)を再考する
4)
母指3次元固定法(母指球安定型プライトン) 
5)
フィンガートラクション-その意義について- 
6)
膝関節における前面窓式プライトン固定 
7)
前腕骨骨折における上肢ギプス二重法(前腕部割り入れ併用式) 
8)
足底プライトンシーネ(元ほねつぎの妻が骨折!
9) 足関節捻挫におけるf(ファンクショナル)-プライトン固定
10)
腓腹筋ラッピングシーネ 

11) 体幹プライトンシーネ(元ほねつぎの母が脊椎圧迫骨折???) 

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→三上式プライトン固定のセミナーのご案内(f-プライトン固定セミナーの開催日程)

 



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